伝統的に中国の政策は、アメリカとの関係が悪くなると日本に接近する傾向がある。1989年の天安門事件のあと、アメリカを中心とする西側諸国に制裁を受け、国際社会で孤立した中国は日本にすり寄った。1992年には江沢民・総書記が来日して笑みを振りまき、半年後の天皇陛下訪中を実現するための布石が打たれた。そして天皇陛下の訪中をきっかけに、中国は国際社会に復帰。アメリカと喧嘩した時に、日本を利用してきた歴史がある。
これから先も、習近平政権が日本に接近を図る可能性があるのだ。それは経済面などでのメリットがある話かもしれないが、注意も必要になる。中国の“媚日”を積極的に受け入れてしまえば、トランプ氏の虎の尾を踏むことにもなりかねないからだ。
激化する米中対立の狭間で、日本には安定した政権と強いリーダーが求められるが、現実はそれとは程遠い。少数与党の石破政権はいつ退陣に追い込まれるか分からない状況なので、米中両国からもまともに相手にされない懸念もある。利用されることはあっても、国際政治のなかでのキープレイヤーにはなれないだろう。
つまり、石破氏は国際社会で存在感を出したいと思っても、余計なアクションは起こさないほうがいい。米中関係を傍観しておくことが今の日本にとって最も戦略的な外交と言えるのではないか。
【プロフィール】
石平(せき・へい)/1962年、中華人民共和国四川省成都市生まれ。評論家。北京大学哲学部卒業、神戸大学大学院文化学研究科博士課程修了。2014年に『なぜ中国から離れると日本はうまくいくのか』で第23回山本七平賞を受賞した。最新著書は、『中国大恐慌の闇』。
※週刊ポスト2024年11月29日号