先のアメリカ大統領選では、事前の“大接戦”との予想を裏切ってトランプ氏が大勝した。新聞やテレビでさえ読み違えた政治力学。今後の国際情勢はどう動くのか? トランプ氏の勝利を予想していた評論家は石平氏が、「中国」をキーワードに今後の世界情勢を読み解く。
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トランプ氏は「すべての中国商品に60%の関税をかける」と公言してきた。中国経済は国内の消費不振が続き、不動産バブルも崩壊したことで疲弊している。今や頼みの綱は対外輸出だが、最大の輸出先であるアメリカでトランプ氏の公約が実現すれば、アメリカ市場において“安さが勝負”の中国商品は大打撃を受ける。
トランプ政権が実際に始動するのは2か月先だが、すでに政治的圧力をかけている。副大統領に就任するJ・D・バンス氏は、「中国こそ最大の脅威」と言い切った人物。外交を担う国務長官にも対中強硬派のマルコ・ルビオ氏を起用した。この陣容を見るともはや「中国潰し政権」とさえ言える。
1980年代にロナルド・レーガン大統領は、ソ連を経済的に追い込み、崩壊させたことで歴史に名を残した。トランプ氏はもう78歳。富も権力も頂点を極め、残された夢は「歴史に名を残す」ことだけ。次の大統領任期の4年間で、あらゆる面で習近平政権にプレッシャーをかけ、本気で叩き潰しにかかるだろう。
そうして米中関係が緊迫し、そのなかで日米同盟がどう機能するかに関心が集まっているが、日本にとって重要なのはむしろ日中関係の戦略だ。