哺乳類の胎盤から抽出したエキスであるプラセンタ(写真提供/イメージマート)

哺乳類の胎盤から抽出したエキスであるプラセンタ(写真提供/イメージマート)

「安全なのはやっぱり日本製」

 元組長がここ数年、打っているのはプラセンタだ。一時期、化粧品の成分としてよく耳にしたプラセンタは、ヒトや哺乳動物の胎盤から抽出したエッセンスであり、医薬品や化粧品や美容ドリンク、健康食品などに使われている。美肌効果に疲労回復、肩こり改善に免疫力アップ、エイジング効果に更年期障害などに効果があるとされる。今では植物性のものや海洋性のプラセンタもあるというが、元組長曰く「安全なのはやっぱり日本製」だ。「サプリメントもあるが、あれは気休め。プラセンタは注射がいいね」。

 皮膚科や美容皮膚科では1回1500円から2500円ぐらいで打ってもらうことができ、週1回のペースで打つことを推奨している医院が多い。わざわざクリニックまで毎週打ちに出かけていくのかと聞くと、「そんなわけない」と吹き出された。「あんなもの自分で打つよ。脱脂綿を用意して、アンプルからピュっと吸い上げて、肩を脱脂綿でシュッと消毒し、プシュって打つだけ。筋肉注射だからさ、どこに打ったって問題ない」。打った後はそこを揉んで終わり。もちろん違法で危険な行為だが、警察にガサ入れされて注射器や針が見つかり違法薬物を疑われても、尿検査ではシロだとと平然と笑う。

 仕入れると外国人クラブの女の子たちに安く分けてやったという。日本のクリニックは彼女たちにとって、言葉の壁や金銭面で敷居が高いようだ。「彼女たちも自分でお尻とかに打っている。お尻に打って痛くないのか聞いたら、平気だよ~と言っていた」と元組長。

 プラセンタのアンプルは日本製でも、打つための針は外国製、といってもコロナ前までの話だ。「医療用の針を日本で入手するのは面倒だし、高いからね。ロシア製とかウクライナ製とか、向こうの知人に航空便で送ってもらっていた。自分で使うだけだからね。日本と違って、品質が揃っていない。針先の研磨技術が違うんだろうな。針によって打った時に痛いものと、痛みなくスッと入るものがある。痛くないのは当たり。当たりの針は煮沸消毒して、もう一度使う」(元組長)。感染などのリスクにはあまり自覚がないようで、「自分が打つから問題なしだ」と笑う。針の入手方法が合法か非合法か聞くと「そんなことは気にしたことがなかった」という。自分で使う目的なら個人輸入は可能だが、おそらくしかるべき所に届け出はしていなかったのだろう。どんなものでも手に入れるのがヤクザだが、今のご時世、逮捕される可能性のある危ない橋は渡れないのもヤクザだ。個人輸入も厳しいらしい。

 それでも「俺の周りはみんな打っていた」というから、彼の周辺の暴力団関係者はみんな打っていたのだろう。「よく『俺も打ってみたいんだけど効果はどう?』と聞かれたよ」と話す。効果のほどを聞くと「肌がつるつるになって、疲れにくくなったかな。後は睡眠薬がなくてもよく眠れるようになったぐらい。ずっと打っているから、今はもう習慣だが、みんなに肌がきれいだと言われるね。夜の営みは?と聞くヤツが多いんだが、そんなものに聞くはずがない。プラセンタで夜が元気になれるんだったら、それこそヤクザはこぞって使うわ」と口を開けて笑った。

 高齢化が加速するヤクザ業界で、彼らは日々黙々と美容と健康に気をつかっていた。

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