中東の各国にまたがる山岳地帯を中心に生活し、「国家をもたない世界最大の民族」といわれるクルド人。
トルコではクルド人が総人口の2割弱を占めており、かつて自治や独立を求める運動を行ったものの、トルコ政府により弾圧を受けた経緯がある。それ以降、現地では差別・迫害を訴える人々が特に多いという。
こうした背景から、欧米諸国では彼らを難民として受け入れているところもあり、約30年前から日本にも埼玉県南部を中心に、相次いでクルド人が暮らすようになっていた。
現在、日本においてはトルコ国籍の外国人が6000人近く暮らしており、うち約2000人がトルコ系クルド人といわれる。その多くが埼玉県川口市や蕨市に定住し、クルド人の人口は過去10年間で4倍にまで増加したともいわれている。
そんななか、近年問題になっているのが、この地域に住む在日クルド人への排斥デモやヘイトスピーチだ。
背景には、2023年7月に発生した川口市立医療センターでのクルド人による乱闘騒ぎがあるとされる。複数人が重軽傷を負う殺人未遂事件になったが、その一連の騒動を収めた動画がSNSを中心に拡散され、これをきっかけにSNS上でクルド人を非難するような投稿が目立つようになった。
さらに直近ではSNS上で改造車に乗って暴走行為を繰り返す若いクルド人や、女子中学生に性的暴行をしたとして逮捕された日本育ちのクルド人などが話題となり、一部で批判の的になっている。
こうした現状に「日本人はみんな優しくて大好きですけど、もう限界です……」と漏らすのは、10年以上日本で暮らすタシ・ティフィキさん(32)だ。