「でもね、星は消えないですから」
その中島に「引退」の二文字が囁かれた時期があった。
「2020年に予定されていたコンサートのタイトルは、『2020ラスト・ツアー 結果オーライ』でした。ラストという文言が引退を連想させましたが、そのツアーは新型コロナの影響で中止に追い込まれました。ところが今年、仕切り直しで1月から始まったツアーのタイトルには『ラスト』の文字がありませんでした。
新型コロナの影響は大きく、たくさんの人が命を落としました。自由に外出できなくて、ストレスを抱えた人も多くいたはずです。そういった負の感情は、中島さんの歌へのエネルギーでもあるわけです。『ラスト』の言葉が消えたのは、中島さんが再びたくさんの言葉を紡いでいきたいと思い始めた証左にも感じられるのです」(音楽関係者)
ステージに立ち続ける中島。一方の谷川さんも最期まで筆を走らせ続けた。
「谷川さんは、晩年も創作意欲を失いませんでした。毎月1回、朝日新聞に掲載されていた谷川さんの連載では、亡くなった4日後に新作の詩が発表されました。そのタイトルは『感謝』。最期まで言葉を紡ぎ続けた谷川さんの集大成でした。その姿勢に、中島さんも歌い続ける覚悟をさらに強くするかもしれません。それが、若い頃からずっと意識し、追い求め続けた谷川さんへの、はなむけになると考えているはずです」(前出・音楽関係者)
冒頭の夜、都内は師走並みの冷え込みを記録した。空気は澄み切って、西の空には、一層明るさを増したいちばん星が輝いていた。谷川さんを「憧れの星」と称した中島は、その言葉の後、大きく息を吐き、さらに天を仰いでこう続けた。
「私にとって星だった谷川さんが、本当に星になっちゃった……。でもね、星は消えないですから。ずっと、見ていたいです。(谷川さんには)到底届きやしませんけど、これからもなんとか、見習っていきたいですね」
そう口にすると、悲しみを振り払うかのように中島は「あはははは」と笑った。
──星になった谷川さんを見上げながら、これからも歌い続けますか?
その問いに中島は、「そうですね」と短く答えた。
※女性セブン2024年12月12日号