芸能

『男はつらいよ』映画第1作公開から55年 最大の魅力は「厄介事を抱えてくる寅さんが帰ってきても“おかえりなさい”と言える関係性」

令和の世にも共感を呼ぶ寅さんの魅力とは(時事通信フォト)

令和の世にも共感を呼ぶ寅さんの魅力とは(時事通信フォト)

 今から55年前、1969年の出来事には前例のないことへの挑戦心、仕事への誇り、そして未来へ向かうパワーが横溢していた。映画『男はつらいよ』シリーズの第1作が公開されたのも1969年。他人の幸せを願い奮闘した寅さんに、誰もが憧れた。【週刊ポスト創刊55周年記念特別企画】

「馬鹿だねぇ」「それを言っちゃあおしめえよ」──主人公・車寅次郎の軽妙な語り口や間抜けでドジな一面は、1作目が公開された1969年から色褪せることなく、令和の世にも共感を呼ぶ。

「恋して、振られて、また旅に出る。人々はそんな寅さんの気ままな存在に憧れたかもしれない。でも、腹違いの妹や隣の工場の社長が寅さんを叱ったり、励ましたり、ストレートな家族ではない“共同体”の織りなす人間模様に、自分たちの事情を重ね合わせることができたから、長く愛された作品になったと思います」(作家・滝口悠生氏)

『男はつらいよ』シリーズが始まった1969年は、高度経済成長期の只中。国が豊かになる一方、安保闘争の激化や公害問題の深刻化など社会にひずみも生まれていた。仕事に邁進するモーレツサラリーマンたちから幸せを保つ心の余裕が失われ始めた時期でもあった。

「共同体の中にいるからこそ“情”が動く。厄介事を抱えてくる寅さんが帰ってきても『おかえりなさい』と言える関係性が、この作品の最大の魅力だと思います」(前出・滝口氏)

 寅さん役の渥美清さんの死去とともに史上最長の映画シリーズは終わりを告げた。しかし、2019年にシリーズ50作目にして最新作である『男はつらいよ お帰り寅さん』が公開された。

「男目線の作品と捉えられがちですが、シリーズを通じて、実はさまざまな女性の生き方や選択を描いている側面もある。女性に優しい目線を向ける寅さんの描かれ方も、作品のキーポイントになっています」(滝口氏)

取材・文/小野雅彦

※週刊ポスト2024年12月6・13日号

関連キーワード

関連記事

トピックス

年の瀬に向けて多忙な日々を過ごされている雅子さま(2024年11月、大分県。撮影/JMPA)
《来年はもっと海外へ》雅子さま、ご活躍の舞台が急拡大の見通し 来年度の国際親善の経費が大幅に増額、訪問先の有力候補はアメリカとブラジル
女性セブン
日曜劇場『海に眠るダイヤモンド』(TBS系)主演の神木隆之介
『海に眠るダイヤモンド』制作秘話 神木隆之介はYouTubeでホストを研究、杉咲花は長崎弁に奮闘、ネトフリ配信に間に合わないほど超タイトな撮影スケジュール
女性セブン
カニエ(左)とビアンカ・センソリ(右)(Getty Images)
《過激ファッションで物議》カニエ・ウェストと18歳年下妻、「丸出しで愛を誓う」仰天セレモニーを計画 海外メディアが報道
NEWSポストセブン
怒りの告白をしたJカップグラドルのなな茶
《総フォロワー500万人のインフルエンサー》なな茶がイベント“ファンの大量ドタキャン”に怒りの告白「すべて出禁にさせていただく」「“グラビアなんかしてるから”と心無いコメントも」
NEWSポストセブン
「動物環境・福祉協会Eva」の代表理事で俳優の杉本彩(HPより)
「熱中症で殺したり、溺死させたり…」悪質ブリーダーのヤバすぎる実態「チワプー」などの異種配合は「命への冒涜」【杉本彩さんインタビュー前編】
NEWSポストセブン
三笠宮妃百合子さまの「斂葬の儀」に参列された愛子さま(東京・文京区。撮影/JMPA)
愛子さま、佳子さま、悠仁さま 三笠宮妃百合子さまの「斂葬の儀」で最後のお別れ 悠仁さまは高校を休んで参列
女性セブン
大塚寧々と田辺誠一
《スマホの暗証番号も一緒》大塚寧々と田辺誠一「スピード再婚」から22年「いい夫婦」の愛だけがあふれた日常
NEWSポストセブン
主張が食い違う折田楓社長と斎藤元彦知事(時事通信フォト)
《沈黙続ける折田楓社長》「朝、PR会社の方から直接連絡がありました」兵庫県HPから“同社記事が削除された理由”
NEWSポストセブン
犬猿の仲といわれていた織田裕二と柳葉敏郎
織田裕二『踊る』スピンオフ『室井慎次』にこっそり出演 「柳葉さんがやるなら…」と前向きに検討、確執は昔の話 本編再始動への期待も高まる
女性セブン
谷川俊太郎さん(右)への思いを語った中島みゆき(左)(事務所の公式HPより、右は共同通信社)
中島みゆきが独占告白「本当に星になっちゃった。でも星は消えないですから」言葉の師と尊敬する谷川俊太郎さんとの別れ、多大な影響を受け大学の卒論テーマにも選択
女性セブン
主張が食い違う折田楓社長と斎藤元彦知事(時事通信フォト)
《慶應SFC時代の “一軍女子”素顔》折田楓氏がPR会社を創業するに至った背景「女子アナ友人とプリクラ撮影」「マスコミ志望だった」
NEWSポストセブン
騒動の中心になったイギリス人女性(SNSより)
《次は高校の卒業旅行に突撃》「1年間で600人と寝た」オーストラリア人女性(26)が“強制送還”された後にぶちあげた新計画に騒然
NEWSポストセブン