公職選挙法違反の捜査と取り調べ
公職選挙法違反容疑の捜査も時間がかかるという。「立候補者が当選しようが落選しようが、公職選挙法違反に問われることに変わりはない。ただ現職で、長く議員をやっているような人物になれば、それだけ関係者が多くなり、支援者たちとの関係も強固になっている。地方の小さな地域なら告げ口のように口を割ったことが知られれば、村八分にされるかもしれない。斎藤知事の場合はどうだろうね」(元刑事)。
一口に公選法違反といっても、その罪状は主に4つある。総務相のHPにある選挙と罰則によると1つ目は買収罪。金銭、物品、供応接待、票の誘導がこれに当たり、約束するだけでも造反となる。斎藤知事も買収罪が疑われている。この買収罪で逮捕されたのが、安倍政権で当時、法相だった河井克行氏と妻の杏里参院議員である。支持者らに金をばら撒いただけでなく、選挙の際に自民党本部から夫婦それぞれの政党支部に活動資金1億5000万円が振り込まれていたことが判明し、自民党への不信感が広がったことは記憶に新しいところだ。
2つ目は利害誘導罪、利害関係を利用して投票を誘導するもの。3つ目は選挙妨害罪。今年の東京都知事選挙と都議会議員の補欠選挙で選挙妨害を行った治団体「つばさの党」の3人らは、この罪で逮捕された。4つ目は投票に関する罪で、なりすまし投票や投票の偽造などだ。前回の米大統領選で、トランプ氏が選挙結果を受け入れず騒ぎになったが、そのときに訴えた理由にした投票の不正や得票数の集計結果の不正などが、これに当たる。公選法違反は立候補者や議員だけでなく、秘書や事務所関係者、支援者など選挙に関わる者が罪を犯すと逮捕される。
証拠を揃えて取り調べにこぎつけても、そう簡単に議員たちは口を割らない。「最初は否定するか、知らぬ存ぜぬを通すか、黙秘するかだ。以前は調べる時に議員バッジを外させた。バッジは議員としてのプライドとアイデンティティーの象徴だからね。まずはそれを剥がした上で、調べ始めた」(元刑事)。
取り調べでは、疑惑を追及するだけでなく世間話などもするという。「自白を迫るだけでなく、笑わせたり泣かせたりと相手の感情を揺さぶったり、落ち着かせたり和ませたりもする。どんなきっかけで話す気になるかは、相手でなければわからない。疑惑に関しては、ひとつのことについて深堀りするように追及して質問する。深堀りされていくと、嘘をついていれば答えを盛ることができなくなる」と元刑事。
また言い方を変えて同じ質問をするという。「嘘をついていれば、同じ内容の質問に答えるうちに、辻褄が合わなくなってくることがある。動揺や焦りが見られればこっちのものだ」というが、「そこで考えるように腕組みをされることもある。こうなると話を聞き出すのは難しい。腕組みは自分を防御する時に出てきやすいので、質問するより、腕組みをほどかせるような話題に変える必要がある」(元刑事)。あの手この手を使って事実を引き出することになる、
「これだけ話題になれば、警察も動かざるをえない」と語る元刑事。斎藤知事の事案は今後どうなるのか。その行方を見守るしかない。