先の総選挙で石破茂・首相は裏金候補12人を非公認の処分にした。しかし、選挙期間中、自民党本部から非公認候補ら8人の党支部に「党勢拡大のための活動費」の名目で公認候補と同じ2000万円が提供されていたことが明らかになった。その原資は政党助成金、つまり国民の税金だった。石破首相は「(党支部への交付だから)非公認候補に出しているわけではない」弁明したが、本当に2000万円は選挙に使われなかったのだろうか。
本誌・週刊ポストは、候補者(出納責任者)が選挙後に選挙管理委員会に提出しなければならない「選挙運動費用収支報告書」から各候補の選挙資金の出所を調査。すると、「無所属」で出馬した候補が、「党支部」の資金で選挙を戦っていたという事実が浮かび上がってきた。【全3回の第2回。第1回から読む】
入金後に150万円の出金
“裏金議員”として自民党から非公認となった中根一幸氏(埼玉6区)は、無所属として衆院選に出馬した。中根氏の選挙運動費用収支報告書における自民党支部から本人への寄附の内訳を見ると、まず10月8日から公示日の15日までに党支部から5回に分けて450万円が寄附されている。そして、自民党本部から党支部に「2000万円」の入金がなされた10月16日の後も、10月21日に50万円、同24日に50万円、選挙後の11月8日に50万円を自身に寄附して選挙費用に充てていた。
支部への2000万円の入金後、合計150万円が選挙費用として出金されているのだ。これこそ“2000万円が選挙に使われた証拠”ではないか。中根氏はどう説明するのか。
中根事務所を取材すると、ベテランの元政策秘書が通帳を出してきた。
「どの自民党支部でも銀行口座を2つに分けている。一般からの個人献金や企業献金用と、党本部から政党助成金が振り込まれる口座です。通常は助成金の口座から一般用の口座に移して使うが、今回振り込まれた2000万円はそのまま助成金用の口座に残しています。選挙の資金は一般用の口座から出したもので、2000万円は選挙に使っていません」
さらにこう語った。
「もともと2000万円は公認候補に配られるものですから、公認されないと決まった時点でもらえないと考えていた。だから振り込みがあった時点で、『なんだこれは?』というのが正直な感想でした。逆風の中でしたから、ありがたいのではなく、『なんてことをしてくれたんだ』ということですよ。問題になるのは目に見えていましたから」
ありがた迷惑だったというのだ。
だが、支部の口座を2つに分けているのは内部的な経理処理にすぎない。右のポケットに2000万円入れ、150万円を出したのは左のポケットだから、“2000万円のほうは使っていない”と言われても納得しがたい。国民から見れば、党本部から支部に送金され、支部の資金が選挙に使われたことに変わりはない。