そうしたなかで来年10月開催が決まったロンドン公演。「横綱不在では話にならないし、やはり琴櫻、大の里といった和製横綱が誕生していてほしいという思いはある」(前出・若手親方)といった声が出るなかで、誰が大役を務めることになるのか。相撲ジャーナリストはこう言う。
「モンゴル出身で膝の悪い照ノ富士は師匠の伊勢ヶ濱親方が来年7月に65歳定年となるのに合わせて引退をすると見られている。そもそも、海外公演で両膝に大きなサポーターをつけての土俵入りでは絵にならない。
九州場所を14勝1敗で初優勝した琴櫻が次の横綱の最有力候補になるが、千秋楽の相星決戦で負けて13勝2敗となった豊昇龍も来年の初場所が“綱取り場所になる”と理事長が明言した。横綱昇進は相撲協会の最大のテーマと言っているようなもの。できれば東西に正横綱を据えた番付でロンドン公演を開催したいのが本音でしょう。現在のひとり横綱が照ノ富士から同じモンゴル出身の豊昇龍に入れ替わるだけでなく、和製横綱の誕生が協会執行部の切実な願いのはずだ」
別の若手親方は「間違いなく和製横綱が誕生するだろう」と見る。
「そもそも、横綱昇進のハードルが下がるでしょう。ガチンコ時代は大関での2場所連続優勝という条件での横綱誕生はなかなか厳しい。どの力士も力をつけているから。ただ、力士たちにも横綱不在になることへの危機感が芽生えている。そういう状況下では琴櫻と同じ埼玉栄出身力士や、豊昇龍と同郷のモンゴル出身力士には全力でぶつかりにいきにくくなる事情がある。
逆に、9月場所の史上最速優勝で“横綱昇進間違いなし”といわれた大の里が苦戦するのではないか。師匠の二所ノ関親方(元横綱・稀勢の里)が先代(元横綱・隆の里)の教えを守って出稽古にいかない。師匠と同様に不器用な力士になってしまえば、他の力士が形成する包囲網を突破できない。徹底的に研究されて、簡単には勝てなくなる。執行部は大の里に期待していると思うが、3大関のなかでは最も綱から遠いのではないかだろうか」
果たして来年10月、どのような番付となっているのだろうか。
※週刊ポスト2024年12月20日号