電動キックボードの利用者の交通違反で検挙された事例が、2023年は年間で2万5156件にのぼったと9月に警察庁がまとめを公表した。そのうち人身事故は219件だった。レンタル電動キックボード市場では2022年に月間の利用者が40万人で世界最大だったフランスのパリでは、死亡事故が相次いだことなどをきっかけに、市民投票により2023年8月末でサービス終了・廃止となった。同じ道をたどることになるのか、日本は独自の道を切り開けるのか。ライターの宮添優氏が、電動キックボードそのものが社会問題と受け取られはじめている原因である、一部の無法なユーザーたちによる混乱をレポートする。
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2024年夏、筆者は「電動キックボード」の利用者の中に、飲酒運転などを繰り返す悪質なユーザーがいることを取材し、記事にした。反響はそれなりにあり、東京だけでなく大阪や福岡在住の読者からも「よく書いてくれた」「本当に危険だ」という声をいただいた。あれから3ヶ月。今度は、ヘルメットなしで乗ることができる、レンタル式の電動キックボードが「首都高」を走っていたというのだ。この問題の取材を続けている大手紙社会部記者が解説する。
「東京を走る首都高の運営会社が、公式Xに”首都高を電動キックボードで走っている人がいる”と映像付きで投稿したんです。映像を見る限り、レンタル式のキックボードであることは明らかで、渋谷近辺で撮影された映像のようでした。しかも、自動車が走行する車道側に大幅にはみ出してみたり、かなり危険な走行。酔っていたかどうかなどの確認はできていませんが、死亡事故が起きてもおかしくない状況だったということで、首都高側も公開に踏み切ったのでしょう」(大手紙社会部記者)
駅ホームを電動キックボードで走る
キックボードが首都高を走行していた様子は、テレビニュースやワイドショーでも報じられた。それに対してSNS上では、ユーザー側の交通安全への意識の低さを非難する声だけでなく、側から見ると危険な運転ができる状態にしているように思えるレンタル事業者を非難する声が溢れた。そして、件の事業者に、警察組織の元「偉いさん」が、天下りをしているという事実も指摘され、もはや事業者に対する誹謗中傷のような罵詈雑言までが、SNS上のあちこちで確認できるような状態である。
社会に不満が溜まっているからだろう、主にレンタルキックボード利用者の不法行為、危険走行に関する情報は、こちらが黙って寝ていようとも、誰かしらから筆者に伝えてくれる状況なのだ。東京都内在住の会社員の男性(30代)は、SNSを通じて、驚くべき情報を寄せてきた。