非常戒厳令の発令で韓国国内を大混乱に陥れた尹錫悦(ユン・ソンニョル)大統領(63)。野党が提出した弾劾訴追案(12月7日)は否決されたものの、韓国検察の特別捜査本部は内乱罪と職権乱用罪の疑いで尹氏の捜査を開始。12月9日には韓国法務部が尹氏の出国禁止措置を取ったことを公表し、「検察は近日中に強制捜査に着手する可能性が高い」(韓国紙記者)とされる。
弾劾訴追案をめぐる与野党攻防の最中、12月7日にはもうひとつ尹氏を追い詰める法案の採決が行なわれていた。
それが、尹氏の妻・金建希(キムゴンヒ)氏(52)の捜査に関する「特別検察法案」である。法案の背景にある金夫人の疑惑について、コリア・レポート編集長の辺真一氏が解説する。
「高級ブランドバッグの収賄疑惑から輸入車ディーラー『ドイツ・モーターズ』の株価操作疑惑、選挙時の与党公認候補選びの不正介入疑惑、経歴詐称疑惑、海外歴訪時の民間人不正同行疑惑、さらには新規建設する高速道路の終点を親族所有の土地近くに変更した疑惑など、数多の疑惑が噴出しています。
一連の問題に対し、政府から独立した特別検察に金夫人を捜査させるための法案が『特別検察法案』です。すでに尹氏が2回にわたり拒否権を行使するも、第一野党『共に民主党』が法案提出を繰り返し、再採決が行なわれました」
結果的に再採決はわずか2票差で不成立となったが、この金夫人の疑惑と特別検察法案が非常戒厳令発令の一因になったとの見方がある。在韓ジャーナリストが語る。
「尹氏は非常戒厳令の発令に際し、政敵の逮捕を目論んでいたとされています。その理由が金夫人への特別検察法案の再採決阻止だったと言われているのです。再採決は否決されましたが、与党議員から2人の造反が出るだけで可決されていた。そうなると金夫人は特別検察に捜査され、収監されていた可能性がある」
過去には金大中大統領の息子3人が収賄や脱税容疑で収監されたこともあり、金夫人を守るために戒厳令を発令したのでは、との声が上がっているのだ。