オフに入っても移籍、トレード、メジャー挑戦など話題は尽きぬプロ野球。今季を振り返るポイントのひとつが阪神の“アレンパ”失敗だが、12球団随一の人気チームは来年、再び栄冠を掴めるのか。江本孟紀氏(77)、中畑清氏(70)、達川光男氏(69)による本誌『週刊ポスト』名物企画「ENT座談会」では、次々と厳しい言葉が飛び出した。【全3回の第3回】
藤川監督が“第二の立浪”に
中畑:それにしても去年、日本一になった阪神は何で失速したんだろうか。
江本:今季はすべての成績が昨季より落ちた。中でも優勝の原動力になった村上(頌樹)、大竹(耕太郎)、伊藤(将司)が全員ダメでした。優勝して浮かれたとは言いたくないけど、3人とも体の横に贅肉がついていた。リリーフの岩崎(優)も肝心なところで使えなかったし、近本(光司)しか打たないからと4番に据えても前後を打つ大山(悠輔)がダメで佐藤(輝明)があの調子。森下(翔太)がちょっと頑張ったくらい。ただそれでもあそこまで追い上げたのは立派かな。
達川:岡ちゃん(岡田彰布監督)のカリスマ性があってこそですね。今季で勇退してしまうのが惜しい。
江本:岡田は本当は監督をもう1年やりたかったみたい。だって年俸1億円もらって2位で、辞めるわけがないでしょう。詳細は伏せますが、監督を続けられなかった理由は、一言で言えば球団の事情ですよ。
達川:岡ちゃんの次の監督は藤川球児。江本さんの高知商の後輩です。
江本:オレは少し心配しています。今はもう元スター選手が監督やコーチをやる時代じゃない。スーパースターの立浪(和義)がドラゴンズで3年連続最下位になったのがいい例。藤川もよっぽど気をつけないと立浪の二の舞いになりかねない。
中畑:エモやんは立浪と藤川が似たタイプだと感じているんだね。
江本:心配なのは、藤川が「ヘッドコーチを置かない」とか「力のないベテランは必要ない」とか言っていること。じゃあ“力のない若手”は使うのかと。
この世界はベテランだろうが若手だろうが力のある選手を使わないとチームが強くなりません。岡田が年寄りだったから、藤川は若さを活かしたチーム作りをスタイルにしたいのかもしれないけど、「オレは若者の味方だ」と突っ走ると立浪みたいになる可能性がある。そこに気をつけてほしいというのが先輩の親心です。
達川:新井(貴浩)カープが成功したのは藤井(彰人)がヘッドコーチにいるからです。藤井が何もかんもやって新井自身は何もしていません。“オレは何も知らんから、よう知っとる奴を連れてきた”という新井が偉かった。
江本:オレの持論だけど、監督になるべきなのは親父的要素がある人で、兄貴的要素の奴はNG。兄貴だとお友達になってしまうから、若くても選手からリスペクトを得られる親父的な要素が必要です。新井も兄貴的な雰囲気があるけど、藤井ヘッドがそれを上手いこと補完している。年齢的に藤川は若者の代表になりそうだから注意してほしい。
実は藤川に「オレをヘッドコーチにして5000万円で雇ったら?」と言ってみたんです。そうしたら「先輩のありがたいお言葉ですが、畏れ多いのでご辞退します」と丁寧に断わられた(笑)。
中畑:そういう対応は丁寧だよね。
江本:もちろん冗談だけど、アメリカでは初めて就任する監督が若いと爺さんみたいな奴をベンチに入れるんですよ。選手との間に年寄りを入れると意思疎通がスムーズになる。日本では監督になった途端に「オレが、オレが」となりがちで上手くいかないケースが多い。
達川:僕は阪神でのコーチ経験があるからわかるけど、あの球団は監督に就任した段階で支持率が50%を切るんです。次を狙っている奴がいるから。巨人も同じだと思いますが、いざ現場でやってみるとキツイですよ。