さらに、政治への野心もあった。
「主人は最終的には政治家になって朝鮮統一を成し遂げようと考えていました。当然、莫大な資金が必要で、そのための事業だったんです」(力道山の妻だった田中敬子)
その矢先の死である。志半ばで潰えた彼の夢は、愛弟子であるアントニオ猪木が一端を引き継いだように映るが、猪木も鬼籍に入った今、力道山の本心がどこにあったか知る術は何もない。ただ、彼が長く生きていれば、我が国はこうまで、アメリカに盲従することはなかったのではあるまいか。
【プロフィール】
細田昌志(ほそだ・まさし)/1971年、岡山市生まれ。鳥取市育ち。CS放送キャスター、放送作家を経て作家に。『沢村忠に真空を飛ばせた男』(新潮社)が、第43回講談社 本田靖春ノンフィクション賞。近著『力道山未亡人』(小学館)が第30回小学館ノンフィクション大賞を受賞。新刊『格闘技が紅白に勝った日~2003年大晦日興行戦争の記録~』(講談社)は12月17日発売。
※週刊ポスト2024年12月27日号