劇団で猛特訓した過去も
でも、それが可能だったのは、元「シブがき隊」の肩書きだけのおかげじゃない、と思っています。劇団での猛特訓を自分に課したからこそ、です。26歳で結婚し、ハネムーンベイビーの長男・隼汰が生まれたとき、もっとしっかり演じることに腰を入れなきゃいけない、と思いました。29歳から3年間、布施博さんの劇団「東京ロックンパラダイス」で鍛えてもらったんです。劇団の活動をメインにしていたらお金になりません。当時の事務所の社長と会長に「3年間だけやらせてください」と手紙を書いてお願いし、舞台にほぼ専念させてもらいました。
おかげで、どんな現場でも物怖じしないで演じることができるようになりました。たとえば、厳しいことで知られる渡瀬恒彦さん主演の『世直し公務員 ザ・公証人』(TBS系)、『新・おみやさん』(テレビ朝日系)の現場。ピリピリと緊張感がありました。渡瀬さんは台本をきっちり頭に入れて現場に入り、無駄口を叩くのを嫌う方。僕も公園を歩きながら、車を運転しながら、必死にセリフを覚えて現場入りしました。
渡瀬さんの長男・渡瀬暁彦さんはTBSのプロデューサーで、僕の息子・隼汰が大変お世話になっていました。そのお礼を一言、渡瀬さんにどうしても伝えたかった。でも、気軽には話しかけられません。ずっと機会をうかがい、2人きりになったタイミングを見計らい、ようやくお礼を伝えると、渡瀬さんはスッと立ち上がり「こちらこそありがとうございます」と、深々と頭を下げてくださいました。渡瀬さんってほんと、格好良い人でした!