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2025年のプロ野球展望

《2025年のプロ野球展望》平松政次氏×江本孟紀氏 分業制の定着で投手力は低下、「バウアーが投げまくって20勝すれば日本の野球が変わりますよ」

DeNAとの再契約が噂されているトレバー・バウアー(時事通信フォト)

2023年シーズンでは中4日で登板することも多かったトレバー・バウアー(時事通信フォト)

 昨年はDeNAが日本一になったプロ野球。近年はロースコアの試合が多く、“投高打低”と言われるが、名投手たちの考えは違うようで……。阪神、南海などでエースとして活躍した江本孟紀氏(77)と、“巨人キラー”と呼ばれ、通算200勝を挙げた元大洋の平松政次氏(77)が対談。厳しい言葉を投げかける。【前後編の後編】

江本:心配しているのが、投手力の低下ですよ。昨季のプロ野球は防御率1点台の投手が続出する一方、打率が3割に達したのは両リーグでわずか3人。「投高打低」が進んでいると言われているけど、それは分業制になったから。

 先発が100球投げれば肩が壊れると心配して5~6回で降板させる。その結果、先発完投型がいなくなり、昨季は沢村賞の受賞者がいなかった。投高打低とされながらも実際は投手の力も落ちている。そうでしょう、沢村賞選考委員の平松さん!

平松:先発が6回しか投げなくて残りは後ろのピッチャーに任せるとなったら、本当に力のある投手は出てこない。昨季の最多勝はセが菅野の15勝、パがソフトバンクの有原航平(32)と日本ハムの伊藤大海(27)の14勝。少なすぎます。おまけにヤクルトとオリックスは規定投球回数に達した投手がいなかった。5~6回までの登板でよければ目一杯投げられるから、打者が打ちあぐねて「投高」になるのは当たり前。

江本:5~6回で降板する投手が昔の9回を投げ切る投手の10倍くらいの年俸をもらえる(苦笑)。良い時代ですよ。

平松:今は先発が100球超えると投手コーチがマウンドに水とタオルを持ってきて「そろそろ代わるか」と伺いを立てる場面をよく見るけど、あれはみっともない。俺は先発で600回以上登板したけど、途中で「代わるか」と言われたことはないよ。

江本:南海時代は監督のノムさん(野村克也さん)がマウンドに来て、「代わるか」とよく聞いてきたけど、「はい」と答えた投手は次から使ってもらえなかった。昔は代わらないことが前提だったけど、今は代わることが当たり前になっている。このままだと、分業制が進んで先発完投型の投手がますます減っていく。今年は沢村賞の選考委員は集まらなくていいんじゃない?

平松:いやいや、いい投手が出てくるのを期待しているよ。2021年から3年連続で沢村賞を受賞したドジャースの山本由伸(26)も急に頭角を現わしたし。

江本:昨季の日本ハムは完投数が12球団で最も多く、下馬評を覆してリーグ2位になった。新庄剛志監督の手腕を他チームも見習ってほしい。

平松:秘かに注目しているのは、DeNAとの再契約が噂されているトレバー・バウアー(33)。2023年シーズンは5月~8月だけの登板で10勝を挙げ、しかも中4日が多かった。バウアーが日本球界に復帰して、中4日で33~34試合ほど投げまくって20勝してくれると、日本の野球が変わってくるかもしれない。

江本:確かに先発完投投手が復権するかもしれないね。でも、出戻りのバウアーに期待するのは情けない。日本人にいないのかと大きな声を出したくなるよ。こんなオチでええんか(笑)。

前編から読む

【プロフィール】
平松政次(ひらまつ・まさじ)/野球評論家。1947年、岡山県生まれ。1967年に大洋に入団。通算201勝のうち4分の1以上にあたる51勝を巨人戦であげ、「巨人キラー」として名を馳せた。現在は沢村賞の選考委員を務める

江本孟紀(えもと・たけのり)/野球評論家。1947年、高知県生まれ。1971年に東映入団。1972年に南海に移籍しエースとして活躍。1976年に阪神に移籍し、1981年の引退後は参議院議員、タレントとしても活躍。近著に『ミスタードラゴンズの失敗』(扶桑社)

※週刊ポスト2025年1月17・24日号

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