ライフ
2025年の将棋界展望

《2025年の将棋界を予測》藤井聡太七冠の圧倒的強さの秘密 対局相手を絶望させる「2度負かされる」の意味、負けた棋士が調子を落とす「藤井イップス」も

小説家の葉真中顕氏(右)と新刊『将棋で学ぶ法的思考』(扶桑社)が話題の法学者の木村草太・東京都立大教授が対談

小説家の葉真中顕氏(右)と新刊『将棋で学ぶ法的思考』(扶桑社)が話題の法学者・木村草太氏が対談

 昨年6月に叡王位を失い、将棋界の八大タイトル独占を崩された藤井聡太七冠。今年は八冠に復帰するのか、ライバル棋士たちがそれを阻むのか。日本推理作家協会将棋同好会共同代表で小説家の葉真中顕氏と、名人戦などの観戦記を寄稿した経験を持ち、新刊『将棋で学ぶ法的思考』(扶桑社)が話題の法学者の木村草太・東京都立大教授が棋界のこれからを語った。【前後編の前編】

焦点は「八冠復帰なるか」

葉真中:一昨年に藤井さんが八冠同時制覇の偉業を達成した時、このまま数年間は将棋界の全タイトルを独占し続けるのではないかと思っていました。それだけに昨年、同学年の伊藤匠さんに叡王位を奪取されたことは、かなり驚きでしたね。

木村:1996年に七冠制覇を成し遂げ、その活躍ぶりが社会現象にもなった羽生善治九段(現・将棋連盟会長)も、達成から約5か月後、三浦弘行さん(当時五段)に棋聖位を奪われ一歩後退しています。デビュー以降、数々の記録を塗り替えてきた藤井さんだけに「勝って当然」という目で見られがちですが、全タイトルを保持し続けるのはやはり簡単ではないのでしょう。

葉真中:プロの世界で圧倒的な実績を残してきた藤井さんですが、実際は紙一重の差が勝敗を分けている。そのことを思い知らされました。

木村:藤井さんは八冠を達成したのは2023年10月で、2022年度は一般棋戦(準タイトル戦の位置づけ)の朝日杯、銀河戦、NHK杯、JT杯をすべて制するグランドスラムを達成しましたが、その翌年度はJT杯しか勝てませんでした。ひとつ歯車が狂っただけで、どう転ぶか分からないのが将棋の世界。藤井さんもギリギリの勝負に挑んでいると分かり、私は逆に王者の凄みを感じました。

葉真中:今年は「藤井八冠復帰なるか」が注目点です。その意味ではまず、1~3月の叡王戦の挑戦者争いが見どころですね。挑戦者は予選を勝ち上がった16名による本戦トーナメントで決まるため、1つも負けられない。番勝負のタイトル戦で勝つよりも、難度は高いと言えるかもしれません。

木村:それでも本命は藤井さんでしょう。タイトル戦の常連である永瀬拓矢九段や豊島将之九段、2月から始まる棋王戦でタイトル戦初登場を決めた若手の増田康宏八段などが強敵ですが、いまの藤井さんがもっともやりにくい相手であろう伊藤さんは、タイトル保持者ですから挑戦者を決めるトーナメントに出ない。順調に勝ち上がる可能性は高いと思います。

葉真中:昨年の佐々木勇気八段との竜王戦七番勝負(結果は藤井の防衛)を見て感じたことですが、最先端の戦型の深い研究に加えて、たとえ劣勢になっても相手を幻惑して逆転に持ち込む藤井さんの勝負術は冴えわたっていました。たとえ中終盤で優勢な局面を築いても、そこから藤井さん相手に勝ち切ることがいかに大変か。将棋ファンはそのことを何度となく思い知らされています。

関連記事

トピックス

第1子を出産した真美子さんと大谷(/時事通信フォト)
《母と2人で異国の子育て》真美子さんを支える「幼少期から大好きだったディズニーソング」…セーラームーン並みにテンションがアガる好きな曲「大谷に“布教”したんじゃ?」
NEWSポストセブン
俳優・北村総一朗さん
《今年90歳の『踊る大捜査線』湾岸署署長》俳優・北村総一朗が語った22歳年下夫人への感謝「人生最大の不幸が戦争体験なら、人生最大の幸せは妻と出会ったこと」
NEWSポストセブン
コムズ被告主催のパーティーにはジャスティン・ビーバーも参加していた(Getty Images)
《米セレブの性パーティー“フリーク・オフ”に新展開》“シャスティン・ビーバー被害者説”を関係者が否定、〈まるで40代〉に激変も口を閉ざしていたワケ【ディディ事件】
NEWSポストセブン
漫才賞レース『THE SECOND』で躍動(c)フジテレビ
「お、お、おさむちゃんでーす!」漫才ブームから40年超で再爆発「ザ・ぼんち」の凄さ ノンスタ石田「名前を言っただけで笑いを取れる芸人なんて他にどれだけいます?」
週刊ポスト
違法薬物を所持したとして不動産投資会社「レーサム」の創業者で元会長の田中剛容疑者と職業不詳・奥本美穂容疑者(32)が逮捕された(左・Instagramより)
「よだれを垂らして普通の状態ではなかった」レーサム創業者“薬物漬け性パーティー”が露呈した「緊迫の瞬間」〈田中剛容疑者、奥本美穂容疑者、小西木菜容疑者が逮捕〉
NEWSポストセブン
1泊2日の日程で石川県七尾市と志賀町をご訪問(2025年5月19日、撮影/JMPA)
《1泊2日で石川県へ》愛子さま、被災地ご訪問はパンツルック 「ホワイト」と「ブラック」の使い分けで見せた2つの大人コーデ
NEWSポストセブン
大阪・関西万博で「虫が大量発生」という新たなトラブルが勃発(写真/読者提供)
《万博で「虫」大量発生…正体は》「キャー!」関西万博に響いた若い女性の悲鳴、専門家が解説する「一度羽化したユスリカの早期駆除は現実的でない」
NEWSポストセブン
違法薬物を所持したとして不動産投資会社「レーサム」の創業者で元会長の田中剛容疑者と職業不詳・奥本美穂容疑者(32)が逮捕された(左・Instagramより)
《美女をあてがうスカウトの“恐ろしい手練手管”》有名国立大学に通う小西木菜容疑者(21)が“薬物漬けパーティー”に堕ちるまで〈レーサム創業者・田中剛容疑者、奥本美穂容疑者と逮捕〉
NEWSポストセブン
江夏豊氏が認める歴代阪神の名投手は誰か
江夏豊氏が選出する「歴代阪神の名投手10人」 レジェンドから個性派まで…甲子園のヤジに潰されなかった“なにくそという気概”を持った男たち
週刊ポスト
キャンパスライフを楽しむ悠仁さま(時事通信フォト)
悠仁さま、筑波大学で“バドミントンサークルに加入”情報、100人以上所属の大規模なサークルか 「皇室といえばテニス」のイメージが強いなか「異なる競技を自ら選ばれたそうです」と宮内庁担当記者
週刊ポスト
前田健太と早穂夫人(共同通信社)
《私は帰国することになりました》前田健太投手が米国残留を決断…別居中の元女子アナ妻がインスタで明かしていた「夫婦関係」
NEWSポストセブン
子役としても活躍する長男・崇徳くんとの2ショット(事務所提供)
《山田まりやが明かした別居の真相》「紙切れの契約に縛られず、もっと自由でいられるようになるべき」40代で決断した“円満別居”、始めた「シングルマザー支援事業」
NEWSポストセブン