立ち飲み屋でのスタッフの涙
その日、19時に店を閉めた後、工藤さんはスタッフを連れて仮設で営業していた立ち飲み屋に行った。スタッフの一人は酒を飲みながら、目に涙を浮かべてこう言った。
「社長、本屋をやっていて本当に良かったですね」
以後、会社では書店の空白地からの出店要請が相次ぎ、東日本大震災の時も仙台市内の店舗の復旧を急いだ。
「『本』を読者に届けているのは、出版社さんや作家さんだけではない。当時の経験は本屋である僕らもまた、街の中で必要とされる存在なのだという実感を、確かに与えてくれたんです」
取材・文/稲泉連
※週刊ポスト2025年1月31日号
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