当時生後2ヶ月だった娘も「語り部」に
あれから30年が経過したいま、施設の利用者は減少。2023年度の利用者は13万人ほどになった。同時に当時の体験を伝える『語り部』の数も、減少傾向にある。
逆風の一方で米山さんは、『語り部』活動は「体験者じゃなくてもできるというのがポリシー」と力を込める。
「『体験者じゃないと話せない』という人も、当時からいっぱいいました。でも、話を聞きたいという人がいてくれている以上は、自分が体験したかどうかは関係ないと思う。これは当初からブレません。いずれ、体験した人はいなくなってしまうじゃないですか。
字で記録してもいいし、映像で記録してもいいと思うんですけど、『語り部』という残し方は、会話で当時の記憶を引き継いでいくやり方だと思う。話してる時の行間とか、表情とか、そういうのを感じて受け継げるものだと思うんです。だから、体験していない人に思いを受け継いでもらうことは、とっても重要なことだと思う」
震災当時、生後2か月だった米山さんの娘・未来さん(30)は父の思いを受け継ぎ、現在「語り部」として活動している。もちろん被災当時の記憶はなく、まさに「経験のない語り部」だ。SNSでの配信ライブなどを活用する娘の姿は、米山さんにも眩しく映る。
「話を聞いた人が、何かひとつでも、気づいたり感じたりすることがあれば、それでもう正解だと思うんです。いろんな人がいろんな人に伝えて、当時のことを考えるきっかけになればいいなと思います」
今日も米山さんは娘とともに、多くの被災者の思いを背負って、記憶と教訓を伝えている。
●取材:加藤慶
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