本の本ではあるが、マウンティングの感じは全然しない
「本の本って、ちょっとマウンティングみたいになりがちで、それが苦手だと感じる人がいるみたいなんです。『積ん読』の本は、読んだ本じゃなくて読んでない本についての本なので、そういう感じが全然しなくてよかった、という感想をくれた人がいました」
しまおさんや、小川哲さんのように、最初に「積んだ」本のことを記憶している人がいる、というのも驚きだった。
「読者アンケートで、『何冊、積ん読していますか』という質問に『数冊』と答えている方がいらして、そういう人たちもこの本を買ってくださったということは、『積ん読』というのは生活と結びついたもので、冊数じゃなく状態の問題なんだというのも気づいたことです」
昨年10月に本が出たとき、刊行キャンペーンとしてX(旧Twitter)で「#自分だけの積ん読」で自分の積ん読をポストしてもらった。小さい箱に入れてあったり、綺麗な山に積んでいたり、さまざまな「積ん読」のかたちを見ることができたのも興味深かったという。
「積ん読」の取材をしたことで、石井さん自身の読書スタイルになにか影響はあっただろうか。
「仕事の関係で献本をたくさんいただいたりしても、全部は読めないじゃないですか。そのことに罪悪感というか、読みたいけど読めない本がどんどん積み重なっていくストレスが結構、自分のなかで大きかったんです。
今回、取材してみて、本の読み方はもっと自由でいいんだと教えられました。管啓次郎さんが言うように好きなパラグラフだけ読んでもいい。通読だけが本の読み方じゃないんですね。結果的に本を買う歯止めが効かなくなりました(笑い)。角田さんの真似をして『戦争×文学』のシリーズを買っちゃいました。飯間浩明さん(辞典編纂者)が文学全集を自炊(スキャナーを使って書籍を電子化すること)しているのを見て、私も文芸誌の目次だけでもスキャンしようかと機械を買いました」
好評を受けて、秋ごろに『積ん読の本』第2弾も出る予定だという。
【プロフィール】
石井千湖(いしい・ちこ)/書評家。大学卒業後に書店員となり、2004年より文芸を専門とするライターとして活動をスタート。現在は新聞や雑誌、ウェブで幅広く活動中。著書に『文豪たちの友情』『名著のツボ 賢人たちが推す! 最強ブックガイド』がある。
取材・構成/佐久間文子 撮影/篠田英美
※女性セブン2025年1月30日号