親子が一緒に遊べる場所に
1月4日、雪の降る寒さのなか、書店にはひっきりなしにお客が訪れていた。「マンガを買ってあげようと思って」と孫を連れてきた常連の女性、お正月の帰省で珠洲市に来た人……。お目当てのコミックを手にして、中学生の女の子が嬉しそうにしている。そのたびに誰もが久さんや淳成さんとちょっとした会話を交わし、店内は常に賑やかだった。
「去年はどうなるか不安でしたが、本屋をやってよかったと思います」と久さんは言う。
「書店は町の『花』のようなもの。そこにあるだけで、何かの役割を果たしていると思うんです」
今年、いろは書店には大きな目標がある。それは夏を目途に新しい店舗をもとの土地に建てることだ。仮店舗のDIYを担当した淳成さんが意気込む。
「カフェスペースを増やして、子供たちが遊べるキッズスペースも作ろうと思っています。滑り台やブランコ、ハンモックなんかを置いたりしてね。いま、この町には親子が一緒に遊べる場所がないので、それができる場所を作りたいんですよ」
震災から1年、新しい店舗への構想を、淳成さんは熱く語るのだった。この町で長く書店を続けてきた父親の久さんは、「こころのオアシス」という言葉をいろは書店のキャッチフレーズにしてきた。その思いは淳成さんにも受け継がれ、町の人々が集う場所としての書店づくりがこれからも続いていく。
※週刊ポスト2025年1月31日号