すでに朝ドラ主演が不要なレベルに
朝ドラの新作が発表されるたびにネット上では「誰が主演女優を務めるか」という予想が書き込まれますが、小芝さんは常に一番手クラスで名前があげられ、業界内でも「あり得る話だろう」と言われてきました。言わば「小芝風花待望論」が年に2回の恒例行事のようになっていましたが、大河ドラマで主演級の活躍を見せ、しかも難役の花魁を演じることで、今後はそれが成立しづらくなっていくでしょう。
もともと朝ドラの主演には「幅広い世代への知名度を上げ、演技面での成長を見てもらえる」というメリットがありました。そんな「新たなスターを発掘する登竜門」というニュアンスは以前よりは薄れたものの、本人だけでなく所属事務所や業界全体も、今なおそれを意識していることは間違いありません。
その点、小芝さんは今回の圧倒的な演技と存在感によって早くも「今さら朝ドラ主演をやらなくてもいい」というレベルに到達。逆に、よほどの大作でない限り釣り合いが取りづらく、「なぜこの朝ドラにわざわざ小芝風花を起用したのか」「NHKは小芝風花をむだづかいするな」などと制作陣が叩かれるリスクが高まっているように見えるのです。
『べらぼう』で語りを務めている綾瀬はるかさんも実績十分ながら朝ドラの主演経験はなし。しかし、その一方で、現在の小芝さんと同じ27歳のときに大河ドラマ『八重の桜』で主演を務めました。もしかしたら現在の小芝さんは当時の綾瀬さんと似たポジションに到達しているのかもしれません。
今春には『あきない世傳 金と銀 シーズン2』(NHK BS)の放送も控えるなど、時代劇での活躍も目立つこともあり、小芝さんも朝ドラより大河ドラマのほうが主演の可能性が高まっているようなムードが感じられます。それでも今後もし小芝さんが朝ドラに起用されるとしたら、超低視聴率や酷評続きなど「朝ドラの大ピンチにおける救世主」なのかもしれません。
いずれにしても、『べらぼう』で見せる小芝さんの演技は、朝ドラ主演を望むファンや業界内の声を封印してしまいそうなほどの美しさや存在感があり、さらなるファン層の広がりを感じさせられます。
昨年末、小芝さんは長年所属した所属事務所「オスカープロモーション」を退所しました。松坂桃李さん、中村倫也さん、菅田将暉さん、杏さん、木村佳乃さん、清野菜名さん、趣里さんら主演級俳優がそろう「トップコート」に移籍したこともあり、国民的女優へのステップを歩んでいくのではないでしょうか。
【木村隆志】
コラムニスト、芸能・テレビ・ドラマ解説者。雑誌やウェブに月30本前後のコラムを提供するほか、『週刊フジテレビ批評』『どーも、NHK』などの批評番組に出演し、番組への情報提供も行っている。タレント専門インタビュアーや人間関係コンサルタントとしても活動。著書に『トップ・インタビュアーの「聴き技」84』『話しかけなくていい!会話術』など。