NHK大河ドラマ『べらぼう~蔦重栄華乃夢噺~』で吉原の花魁を演じて、称賛を集めているのが小芝風花(27才)だ。俳優としての実力にますます注目度が増しているが、これまで幾度となく浮上している“朝ドラ主演待望論”が消滅してしまったという。一体どういうことか? コラムニストでテレビ解説者の木村隆志さんが解説する。コラムニストでテレビ解説者の木村隆志さんが解説する。
* * *
1月5日・12日に大河ドラマ『べらぼう~蔦重栄華乃夢噺~』(NHK総合)の第1・2話が放送され、主人公の蔦屋重三郎(通称・蔦重)を演じる横浜流星さんとともに「事実上のダブル主演に見える」と称賛を集めていたのが小芝風花さん。
小芝さんが演じているのは、物語の舞台である吉原の花魁・花の井。蔦重とは幼なじみであり、「互いによき相談相手」という関係性で、女郎としてつらく苦しい環境に身を置きながら、ともに吉原の再興に尽くす様子が描かれています。
特に第2話では、蔦重が男色家の平賀源内(安田顕)に迫られたとき、花の井が男装でさっそうと登場。「男を差し出したとあっては吉原の名折れ」と言い切って、源内の思い人である二代目 瀬川菊之丞にふんして舞を披露するシーンがありました。
小芝さんが見せる花魁としての目線、微笑み、声色、所作、さらに高下駄を履いての花魁道中などに、ネット上は「美しい」「つややか」などと早くも称賛一色のムード。第1話では女郎が全裸で折り重なるように捨てられるシーンがあるなど、当時の残酷な現実も描かれる中、蔦重の明るさと花の井の美しさがそれを和らげるという重要な役割を担っています。
「花魁・花の井」が難役である理由
ネット上の声で目立つのは「こんな風花ちゃん見たことない」「いつもと全然違う」という驚きの声。これまで小芝さんは小柄でかわいらしいという印象があって可憐な役柄が多く、だからこそ「次の朝ドラ主演に」という声があがり続けていました。
実際、同じ時代劇でも1年前に放送された『大奥』(フジテレビ系)では、10代将軍徳川家治の正室・倫子を演じましたが、こちらは皇室の血を引く公家の娘という役柄。純真で優しい性格の持ち主で、大奥の人間関係に翻弄される……という小芝さんのイメージ通りの印象がありました。
しかし、今作で演じている花魁の花の井は、単に妖艶さを求められるだけでなく、蔦重に詰め寄るなどの江戸っ子気質もあって、さらにひそかな思いを隠して蔦重に力を貸す芯の強さもあるなど、文句なしの難役。
第2話でも助けた蔦重に「源内先生とお近づきになりたくて出しゃばったのはわっちなんで」「ま、せいぜいお励みなんし」と言い切り、続けざまに「『吉原を何とかしなきゃ』って思ってんの、あんただけじゃない。“かごの鳥”にできることなんてしれてるけど。あんたは一人じゃない」と勇気付けるシーンがありました。
小芝さんは現在27歳ですが、『べらぼう』ではその若さを忘れてしまうほど、凛とした色気や芯の強さを感じさせていることが称賛につながっているのでしょう。
20代は朝ドラ主演の適齢期であり、実際に放送中の『おむすび』橋本環奈さんは25歳、今春スタートの『あんぱん』今田美桜さんは27歳、今秋スタートの『ばけばけ』高石あかりさんは22歳。2020年代の朝ドラを振り返っても、『虎に翼』伊藤沙莉さん、『舞いあがれ!』福原遥さん、『ちむどんどん』黒島結菜さん、『おちょやん』杉咲花さんも20代で主演を務めました。