助演女優として支えてきた安心感
さらに「高橋が宇宙人であること」を共有する清美、葉月、美波の3人が高橋をイジるような会話に発展していく様子が笑いを誘い、作品そのものの魅力につながっています。
このような脚本・演出は3人を演じる市川実日子さん、鈴木杏さん、平岩紙さんのナチュラルな芝居あってこそのものでしょう。バカリズムさん自身、「どこにでもいる普通の人を演じられる」という彼女たちの強みを最大限に生かすような脚本を手がけている感があります。
また、視聴者にとって大きいのは、「彼女たちはバイプレーヤーとして地道に積み上げてきた実力と実績があると知っている」こと。人気や芸能事務所との関係性を優先したキャスティングではなく、多くの作品を支えてきた中堅女優が集結した作品という安心感があるのです。
そんな“バカリズムさんの脱力した会話劇×実力・実績ともに十分の中堅女優”という組み合わせは、翌朝の仕事や学校が気になる日曜夜のイージーウォッチングに最適。2015年4月にスタートした日本テレビ22時30分~の「日曜ドラマ」は、これまで37作が放送されてきました。
しかし、2018年の『今日から俺は!!』、2019年の『あなたの番です』と『3年A組-今から皆さんは、人質です-』、2023年の『ブラッシュアップライフ』がヒットした以外は苦戦した作品が多く、『セクシー田中さん』で悲しい結果を招いてしまったのは記憶に新しいところ。だからこそ安心して楽しめるうえに癒しも感じるバカリズムさんの新作は救世主のような感があります。さらに「今後も同枠は安心や癒しを感じさせる路線をベースにしていけばいい」という道しるべになったのかもしれません。
振り返ると、バカリズムさんが脚本を手がけ2017年に放送された『架空OL日記』(日本テレビ系)でもOLたちの雑談が最大の魅力となっていました。『ブラッシュアップライフ』の成功を受けた『ホットスポット』はその作風をさらに加速させているだけに、最後まで視聴者を楽しませてくれるでしょう。
【木村隆志】
コラムニスト、芸能・テレビ・ドラマ解説者。雑誌やウェブに月30本前後のコラムを提供するほか、『週刊フジテレビ批評』『どーも、NHK』などの批評番組に出演し、番組への情報提供も行っている。タレント専門インタビュアーや人間関係コンサルタントとしても活動。著書に『トップ・インタビュアーの「聴き技」84』『話しかけなくていい!会話術』など。