愛する者との別れ、大切な人の喪失は人生の中でも最も大きなストレスである。ファンが中居さんの突然の引退に衝撃を受け、驚き、怒りや悲しみといった感情に襲われたのは「モーニング」と呼ばれる情緒的な経験をしたからだ。大切な対象を失うと、人は情緒的な危機から抜け出すために「モーニングワーク」というプロセスを経るといわれる。第一段階はショックによる情緒的危機の時期であり、あまりにショックが強く、どうしていいのかわからず、混乱するという。人によっては不安や無力感から身体的は不調を感じるかもしれない。
ショックの後は喪失や否認の段階であり、失った者への思いが強く、失ったという事実を認めることができない時期になる。人によっては思いの強さとともに恨みや憎しみの感情が強くなり、はけ口を求めてるようになるかもしれないが、それが誹謗中傷のような形を取るのは悲しみや辛さを癒すことにはならない。その後は失った対象がもう戻ってこないという事実を認めざるを得ず、諦めるという絶望や失意の段階に入る。その後にやっと失った事実を認めて、前を向くようになる再生や再建の段階になるといわれる。動揺し混乱しているファンたちは今、ショックか喪失や否認の段階にいるのだろう。
さらに「ヅラの皆さん」というファンクラブの会員への呼びかけが、ファンの感情をさらに辛くさせたかもしれない。「一度でも、会いたかった 会えなかった 会わなきゃだめだった」という文章にある「会えなかった」がファン心理を刺激した気がする。「会いたかった 会わなきゃだめだった」は、一人称の文章で中居さん本人の気持ちであるが、会えなかったというのはそうしたかったのに、できなかったということを意味する。会えなかったのはなぜなのか、ファンたちは様々に憶測するはずだ。
「こんなお別れで、本当に、本当に、ごめんなさい」と謝りつつ、「さようなら…。」という言葉を残して表舞台から姿を消した中居さん。一方的な報告文書だけではファンも心の区切りがつかないだろう。トラブルを起こした”相手さま”との守秘義務などから会見を開くことは難しいだろう。だがせめてファンクラブの会員に向けて10秒でもいいから「本当にごめんなさい」そして「今まで応援してくれてありがとう」というビデオメッセージを出していればよかったのに、と思うばかりだ。
中居さんとしては大切なファンだからこそ、少しでも早く報告をしようと思ったはずだ。そのファンたちをこんなにも動揺させたまま芸能界を去ってしまうとは。彼自身も追い詰められていたのだろうが、「今後も、様々な問題に対して真摯に向き合い、誠意をもって対応して参ります。」というコメントに反している気がして残念でならない。