一方で、男性の証言の信憑性を疑う声もある。東京医科大学病院救命救急センターで救急医を務めた経験もある現役医師の鎌形博展氏が、違和感について指摘する。
「心臓マッサージをしつつAEDと毛布を用意したそうですが、毛布はどこから出てきたのでしょうか。また、『毛布の中で衣服をめくって電極パッドを貼り付けた』といいますが、僕がAEDを使うとしても毛布の中でパッドを貼るのは難しいです。
いくら救命活動に関わったといっても、通りすがりの第三者が救急車に一緒に乗ることは普通ありません。基本的には救急車に引き渡して終わりで、そのときに救急隊に連絡先を聞かれることはありますが、看護師に名刺を渡すとは聞いたことがない。また、常識のある救急隊員や看護師であれば、本人の了承を取らず勝手に連絡先を第三者に教えることもないはずです。
被害届を出した親を女性が説得して和解で決着したといいますが、正直なところ、AEDを使うほどの状態に陥った女性が短期間でそれほど回復するケースはかなり珍しい。“可能性はゼロではないが、極めて低い”という要素がいくつも重なったエピソードのように感じます」(鎌形医師)
鎌形医師は、「男性が女性にAEDを使ってトラブルになった実例なんて聞いたことがない」と断言する。
「SNSでこの手の話題は盛り上がりますが、現実にありえない事象について議論するのはナンセンスでしょう。たとえメディアが問題提起するにしても、世間への影響を考えたら相当慎重に取材すべき事案です。少しでも多くの命を救うためにAED講習会などの啓発活動をしている人たちの気持ちを踏みにじっているように感じます」
証言の裏取りも含めた取材の経緯についてABEMAに問い合わせたところ、広報部は「大変申し訳ございませんが、番組制作の過程については、回答を差し控えさせていただきます」と回答した。
AEDをめぐる議論は命にかかわることもある。慎重かつ冷静に進めていくべきだろう。