不測の事態が自分の身近に起きたとき、黙ってやり過ごすか、適切な対処をめざして試行錯誤するか、どちらを選択するかで未来は大きく変わるだろう。中居正広の女性トラブルをめぐるフジテレビの対応は、黙って通り過ぎるのを待ち続けたあげく事態を悪化させてしまったようにみえる。臨床心理士の岡村美奈さんが、10時間超会見で垣間見えた港浩一・元フジテレビ代表取締役社長に生じた「バイアス」について解説する。
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1月27日午後4時から始まったフジテレビの二度目の会見、登壇した経営陣は10時間半近くも質問に答えた。不躾な質問に途中で逆上したり、ブチ切れることなく、どんな質問にもなんとか答えようと努めていたのは、辞任を発表したフジ・メディア・ホールディングス(HD)取締役でフジテレビ社長の港浩一氏と同HD会長でフジテレビ会長の嘉納修治氏、役員を続ける同HD社長の金光修氏、フジテレビ副会長の遠藤龍之介氏、そしてフジの新社長に就任する清水賢治氏の5人だ。
会見で「全責任は私にあります」と言い切った港氏の顔は疲労の色が濃かった。登壇した経営陣の中で、2023年6月に発生した中居正広氏による女性トラブルを知っていたのは港氏だけ。人権侵害の可能性がある事案でありながら、港氏は、当人同士しか知り得ないプライベートでセンシティブな出来事で、女性の希望だとして「少人数で職場復帰できるまで寄り添う」と決めたと述べた。結果、当時コンプライアンス委員会のトップにいた遠藤氏にも情報は共有されなかった。
中居氏の番組継続について、「いつ終了するか常に考えていた」という港氏は同時に「女性のコンディションについても、番組を終了することが刺激にならないかを考えていた」。人に知られずに職場復帰したいという女性の意志を尊重するばかりに、早期に中居氏の番組を終了するチャンスも逃したと語った。始まったばかりの『まつもto なかい』を「唐突に終了することで憶測を呼ぶことを憂慮した」と釈明。番組を中止するような大きな動きをつくることを控えたいという考えがあったという。
ここで港氏に「不作為バイアス」が生じた可能性はある。何らかの決断がマイナスの結果を生むになら、今は何もしないほうがいいという考えが生じたのではないか。そして今は時期をみよう、女性の体調を尊重しようと自分に言い訳したのではないだろうか。