「沖縄はローカルスターをつくらないと、バラエティが衰退してしまう」
O-1の生みの親である元沖縄テレビのディレクター山里孫存は視聴者投票にした理由をこう話す。
「O-1が目指してきたのは、沖縄の人がいちばんおもしろいと思う芸人は誰だ、ということなんですよ。つまり、日本中に届けたいわけじゃないんです。沖縄は立地的に交通費などの問題もあって、内地から芸人を呼ぶのが難しい。なので、ローカルスターをつくらないとバラエティ番組は衰退してしまう。沖縄の人は沖縄あるあるを突っついたほうが湧く。なのでO-1も必然的に沖縄の言葉や文化を入れ込んだものが増えていったんです」
わさびの具志堅は、こう苦笑いを浮かべる。
「O-1はどうやって県民を笑わせるか。もう、ほぼ沖縄あるあるも出尽くしているんで。たぶん、そろそろなくなるんじゃないかな」
今大会、84組の中で頂点に立っためーばーカーリーのボケ役であるじゅん選手も、沖縄を代表する中堅のうちの1人。ありんくりん同様、うちなーぐちを多用するため、県外の人からすると何度となく脳裏にクエスチョンマークが浮かぶ。ただ、本人はまったく意に介していない。
「自分は標準語、しゃべれないんで。沖縄が好きだから、沖縄でずっとやっていきたい。芸人として沖縄で食っていく、家族を養うことが目標なんで。子どもが5人いるので、いずれは家を買いたいという夢もあります」
これぞO-1王者とも言える優勝コメントだった。
じゅん選手はこの日のために1回大会から18回大会までの動画をすべて見直し、クリスマスも正月も返上し、ネタを磨き上げてきのだという。
「自分はO-1を観て、芸人やりたいなと思ったんで」
おそらく、大阪・東京以外で、この大会のために芸人になりたいと思えるようなお笑いコンテストが存在するのは沖縄だけだろう。
■取材・文/中村計(ノンフィクションライター)