日本一の漫才師を決めるM-1グランプリは年末の風物詩となっているが、沖縄では「O-1グランプリ」が年始の風物詩となっている。全国的にはあまり知られていない沖縄芸人たちの熱闘を、ノンフィクションライターの中村計氏がレポートする。【前後編の前編】
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「宜野湾だね! それは宜野湾のことだから」
オリオンリーグの玉代勢直が、沖縄の地名である「宜野湾」と「宜野座」を勘違いした相方にそうツッコミを入れた。
宜野湾市は人口約10万人の都市であるのに対し、宜野座村は人口約6000人ちょっとの小さな村。宜野座を宜野湾と聞き違え、宜野湾トークを展開してしまうという沖縄県民の「あるある」を題材にした漫才のネタだった。
「東京では絶対にできないですね」
玉代勢は、そうにやりとする。
令和ロマンの史上初の連覇で幕を閉じたM-1の興奮が冷めやらぬ年明け、1月2日のお昼過ぎ。関東エリアでは箱根駅伝の第5区、山の区間で青山学院大がトップに立った直後のことでもあった。日本の南、沖縄テレビのスタジオでは「もう1つのM-1」がひっそりと開催されていた。
O-1グランプリ2025──。
沖縄県民の、沖縄県民による、沖縄県民のためのお笑いコンテストである。アルファベットの「O」は沖縄の「O」であり、琉球王の「O」でもある。今年で19回目を迎え、県民にとっては新春の風物詩として定着している。