400勝投手の金田さん(左)も、吉田さん(右)には苦手意識があったという
2月3日、阪神タイガースを監督として球団史上初の日本一に導いた吉田義男さんが91歳で亡くなった。他の内野手との素早い連携が求められることから「守備の要」と称される遊撃手で日本最多となる9度のベストナインに輝く守備の達人だが、阪神では球団3位となる1864安打を放ち、球団2位の350盗塁、球団最多の264犠打の記録を持つ打撃の人でもあった。
そんな吉田さんを超苦手にしていたのが「カネやん」こと400勝投手の金田正一さんだった。吉田さんの通算成績は打率.267、本塁打66本でありながら、金田さんには打率310、本塁打8本という通算対戦成績を残している。
金田さんは「スピードガンがない時代だったが軽く投げて160キロ台だった」としながらも、「あのチビだけは手こずった」と話していた。阪神OBの安藤統男さんが今回の吉田さんを偲ぶコメントのなかで「打撃では金田(正一)さんとの相性が抜群だった。(中略)球界最高峰のエースから『こら、チビ!』とドスの利いた声で威嚇されていたのは、何よりの勲章だろう」(スポーツ報知)と語っている。
金田さんは身長167センチの吉田さんを「チビ」と呼んでいたが、それは敬意を表してのことだった。だから吉田さんのことを話すカネやんは嬉しそうだった。
「あのチビな(笑)。ワシの球は伸びていくんだから、あんなチビにはストライクにはならん。それにあいつはしゃがむんじゃ。チビがバットを持ってしゃがむから、ストライクなんかなりゃせん。マウンドから“立って打て”と怒鳴ったもんじゃ。
阪神は吉田ぐらいしか大したヤツがおらんから1人ぐらい出してもどうってことがないと思ったが、あれだけは困ったなぁ。真っ直ぐはボールになるから、カーブしか投げられん。するとカーブを待ってうまく打ちよるんじゃよ。サヨナラヒットを打たれた記憶もあるが、巨人阪神のOB戦までラッキーゾーンにホームランを打ちやがった(苦笑)。往生こいたで」