人口5560人の町で、なぜこんなことが可能なのか。奈義町情報企画課の小坂氏が明かす。
「独自の子育て支援として、予算の5%にあたる約3億円を回しています。財政的に決して余裕があるとは言えませんが、ふるさと納税や地方債などを活用して賄っています。
他の予算を削って捻出していると誤解されがちですが、そうではありません。だからこそ、多くの方にご理解いただけているのだと思います」
閉鎖的な町にならぬように…
奈義町の子どもたちは15年間、同じ顔ぶれで育つ。2024年に幼稚園と保育園の計3園が統合されたこども園から始まり、小学校も中学校もひとつしかない。地域のつながりはひときわ濃い。
「『都会では人間関係が希薄で、隣に誰が住んでいるのかもわからない』と嘆く人も多いですが、奈義町ではみんなが顔見知りという点が強みになっています。
ただ、それだけだと“閉鎖的な町”になってしまい、そこで育つ子どもが“この町でしか生きていけない人”になってしまう可能性もあります。だからこそ、英語教育や国際交流にも力を入れています」(情報企画課・井戸課長)
奈義町では3歳から中学3年生まで、継続して英語に触れられる環境が用意されている。外国語指導助手(ALT)が各学年に1人配置され、外国語指導助手が身近な存在として関わる。『フランス人講師によるフランス料理教室』が開催されるなど、異文化に触れられる機会が豊富なのだ。
「町だけで完結せず、広い世界を見てもらいたい。けれど、いつかまた奈義町に戻ってきてほしい──」
井戸課長はそう願いを込める。