1976年11月、暴力団員がぎっしり詰めかけた中で行われた極東関口一家三浦睦会の会長襲名披露式。静岡・熱海市の暖海荘(時事通信フォト)
山口組の山菱はローマ字のCとDの組み合わせに見え、CDのブランドロゴに似ていたことから”クリスチャン・ディオール”。ブランドには迷惑だったことだろう。稲川会は代紋に稲穂が描かれていることから”農協”、住吉会は住の漢字を丸く囲んでいるのが、昔の日本住宅公団のロゴマークに似ていたことから”住宅公団”と呼ばれていた。当時は「あいつはクリスチャン・ディオールだ」「こっちに座っているのは農協の団体」などと隠語を使って、客の素性を話していたという。
組員になれば”虎の威を借る狐”で、虚勢を張って堂々名乗りたいところだろうが、六代目山口組ではそうもいかないらしい。直参にあたる二次団体から三次、四次と多くの傘下組織を持つ六代目山口組では、プラチナ以外、六代目山口組とは名乗ることができないという。A氏は「自分の名刺に代紋は入れられても、六代目山口組とは入れられない。六代目山口組の傘下にいるが、司組長から直接盃をもらっていない者は六代目山口組とは名乗れない」。
名乗れないのは直参の組の幹部も同じだ。「山口組の名簿には毎年、その時点での直参の組が載せられ、組の名前、組長の名前、若頭や舎弟頭と呼ばれるナンバー2の名前に本部長の名前が書かれている。しかし若頭や本部長として名前が載っていても、名刺に六代目山口組とは入れられない。名乗る時は自分が所属する組の名前になる」とA氏はいう。「仕事で出す名刺は代紋なしの名前だけという名刺も多くなった。ヤクザも肩身が狭くなったからね」。
華やかな席でお披露目されたチェーン付きプラチナの代紋とは違い、傘下組織の幹部が代紋を胸につけるのは、もう定例会や幹部会、葬式くらいだという。