出入国在留管理庁の地方支分部局のひとつ、東京出入国在留管理局(東京都港区)
街中のコンビニや飲食店などで、外国人従業員を目にするのは珍しい光景ではなくなった。厚生労働省によると、外国人労働者数は230万2587人で前年比12.4%増(25万3912人増。2024年10月時点)。届出が義務化された2007年以降、過去最多を更新した。
人手不足が常態化する日本において、新たな働き手の存在感が高まっている。これまで外国人を雇ったことがない会社でも採用に踏み切るケースは少なくない。ただし、そうした現場では外国人雇用の難しさに直面するケースもある。
外国人材と人手不足の日本企業を多数マッチングしてきた「株式会社ジンザイベース」の代表取締役・中村大介氏が、外国人労働者の実態を綴った『日本人が知らない 外国人労働者のひみつ』(白夜書房)より、外国人材に困惑した会社のエピソードをお届けする。(同書より一部抜粋して再構成)【全4回の第1回】
* * *
外国人が働いている業種というと、読者にとって身近なのは、おそらくコンビニや飲食店だろう。
実際、人手不足が深刻な飲食業界は外国人材に支えられている。日本人に不人気で、人が集まらないから外国人材に頼るしかないのだ。
そんな飲食業界でも、まったく求人案件がなくなってしまったことが最近あった。
コロナ禍の時期である。外国人材を採用したいという企業は、都市部ではほぼ皆無。では、仕事にあぶれた外国人たちはどうしていたか。
仕事がある地方の企業、はっきり言えば外出自粛などの影響が少ない田舎の会社に全国各地から集まってきて働いていたのである。
「すごい田舎」の人手不足解消でベトナム人を雇用
社長みずから「すごい田舎です」という西日本のある田園地帯。そこで飲食チェーンのフランチャイズ店舗を複数展開している某社も、そんな企業のひとつだった。
そもそもこの地域では、コロナ以前から就労人口が減少しており、人手不足は深刻だった。
体力が必要な飲食店で働けるような若年人口は特に少ない。たまに雇うことができても、離職率は高い。
「どうせ日本人を雇ってもすぐ辞めてしまうなら、日本で何が何でも稼ぎたい、という外国人を雇うほうがいいのでは?」と社長は以前から考えていたという。
コロナ禍に入っても、都市部の飲食店に比べると客足への影響は少なかったし、テイクアウト利用が伸びたこともあり、人手不足は相変わらず。そこで、人材エージェントなどを通じて特定技能外国人材の募集をかけると、全国各地から応募があった。9割はベトナム人だ。
「なんとかしてここで働かせてください」
「一生懸命働きます」
「がんばります」
このように熱心に言うベトナム人たちにほだされ、社長は多数のベトナム人を受け入れることになった。それまで日本人だけでやってきた中、思い切った決断である。