同じ少年野球チームに所属していた田中将大(左)と坂本勇人(時事通信フォト)
楽天から巨人に移籍して再起を期す田中将大(36)。かつての輝きを失ったようにも見えるが、“マー君”を育てた恩師たちは復活への道筋を見出していた──。
崖っぷちの田中がキャンプで汗を流している。昨季、菅野智之(35)を復活へと導いた久保康生巡回投手コーチと二人三脚で、フォーム改造に取り組む毎日だ。
駒大苫小牧で夏の甲子園を制し、楽天に入団後は2013年に24勝0敗という驚異的な成績で日本一に貢献。渡米後はヤンキースで活躍し、大きな期待を背負って2021年に楽天に復帰した。しかし、帰国後は往時の輝きを見せられず、昨季の登板は1試合のみで0勝に終わった。
楽天コーチとして田中をエースに育てた名伯楽と言われる佐藤義則氏はこう指摘する。
「昨年、一昨年は右ヒジの痛みからなのか、少し小手先で投げている印象がありました。渡米前はしっかり腕を振って投げられるのが最大の長所だったが、復帰後は振りが少し弱くなっていた。メジャーから帰ってきてすぐの頃に、本人に直接伝えたこともあります。
今年のキャンプの映像を見る限り、その腕の振りが改善されたようにも見えます。久保コーチの修正に本人が納得して調整を進められているなら、それでいいのではないか。楽天1年目の時に右膝の使い方を教えてその日のうちに順応したことをよく覚えていますが、もともとは修正能力が高い選手です」
移籍による環境の変化は、指導するコーチだけではない。今回、24年ぶりにチームメイトとなったのが坂本勇人(36)だ。
同い年の田中と坂本は、兵庫県伊丹市にある昆陽里小学校の同級生で、少年野球チーム「昆陽里タイガース」に所属。ともにチームの中心選手だった。坂本がピッチャー、田中がキャッチャーとしてバッテリーを組んだこともある。
巨人の入団会見時、田中は坂本に「よろしくお願いします。いろいろ教えてください」と連絡したことを明かした。助力を求めた格好だが、少年時代の2人は「ライバル」だった。
当時、昆陽里タイガースの監督だった山崎三孝氏(現理事長)が振り返る。
「昔はとにかく張り合っていて、仲良くしていた記憶がありません。『今はマスコミの前だけでは仲良さそうに見せているのか?』と疑ってしまうほどです(笑)。中学では同じ学校に進みながら別々の野球チームを選んだのも、それぞれの野球観の違いがあったから。その2人がプロとして同じユニフォームに袖を通すのは感慨深いことです」