ライフ

第31回小学館ノンフィクション大賞・宇都宮直子氏『極彩色の牢獄』 詐欺罪で実刑判決を受けた“頂き女子りりちゃん”の軌跡をたどり、罪を捉え直す

第31回小学館ノンフィクション大賞を受賞した宇都宮直子氏

第31回小学館ノンフィクション大賞を受賞した宇都宮直子氏

 昨年、評伝ノンフィクションとして大反響を呼んだ第30回大賞受賞作『力道山未亡人』(細田昌志著)に続いて、今回も力のこもった最終候補作が揃った小学館ノンフィクション大賞。緊張状態の続くレバノン現地ルポから箱根駅伝の伝説的ランナーの評伝まで5作品を対象に新選考委員3人が議論を重ねた結果、複数の男性から大金を騙し取り詐欺罪で実刑判決を受けた“頂き女子りりちゃん”に取材した作品が大賞に選ばれた。受賞作は今春にも刊行予定。

【受賞作品のあらすじ】
『極彩色の牢獄』/宇都宮直子(フリーランス記者/47歳)

 誰も知らない、私だけの物語──。「頂き女子りりちゃん」を名乗って複数の男性から約1億6000万円をだまし取りそれらの“所得”を申告せず4000万円を脱税したとして逮捕され、懲役8年6か月、罰金800万円の判決を受けた渡邊真衣被告(26歳)。

 金髪にピンクのスウェット姿に加え「おぢ」と呼ぶ年上男性たちから金銭を搾取するテクニックをまとめた「マニュアル」を販売していたこと、逮捕後、Xアカウント「りりちゃんはごくちゅうです」を立ち上げ留置場での日々を配信したことなどから一部でカルト的な話題を集めた彼女は“稼いだ”金銭の大半をホストクラブにつぎ込む「ホス狂い」でもあった。

 2019年のホスト殺人未遂事件をきっかけに歌舞伎町に住み込み、取材を始めた著者は、かつて住人だった渡邊被告がSNSに書き残した一言に引き寄せられるようにして、接見に向かう。

 裁判や取り調べで暴かれた嘘にまみれたプロフィールの先にある、「私だけの物語」を知りたい。その一心で名古屋拘置所に通う著者に、渡邊被告は「暴力的な父親や性被害の辛い記憶に満ちた地元から逃れ、手に入れた居場所が歌舞伎町でありホストクラブだった」と“本当の生い立ち”を聞かせ、著者はやがて「彼女の罪とは何なのか」と逡巡し始める。

「遺書」を書くほどに追い詰められた被害者の男性、犯罪と理解してなお「りりヲタ」を自称し、裁判所に詰めかける女性たち、「一歩間違えれば私が彼女だった」と話す歌舞伎町の女のコ、自らも罪を被る形で逮捕された過去の指名ホスト、渡邊被告が感情を波立たさせる母親──彼女の軌跡を辿り、罪を捉え直す。

関連記事

トピックス

「複数の刺し傷があった」被害者の手柄さんの中学時代の卒業アルバムと、手柄さんが見つかった自宅マンション
「ダンスをやっていて活発な人気者」「男の子にも好かれていたんじゃないかな」手柄玲奈さん(15)刺殺で同級生が涙の証言【さいたま市・女子高生刺殺】
NEWSポストセブン
大阪・関西万博が開幕し、来場者でにぎわう会場(時事通信フォト)
「日本人は並ぶことに生きがいを感じている…」大阪・関西万博が開幕するも米国の掲示板サイトで辛辣コメント…訪日観光客に聞いた“万博に行かない理由”
NEWSポストセブン
ファンから心配の声が相次ぐジャスティン・ビーバー(dpa/時事通信フォト)
《ハイ状態では…?》ジャスティン・ビーバー(31)が投稿した家を燃やすアニメ動画で騒然、激変ビジュアルや相次ぐ“奇行”に心配する声続出
NEWSポストセブン
NHK朝の連続テレビ小説「あんぱん」で初の朝ドラ出演を果たしたソニン(時事通信フォト)
《朝ドラ初出演のソニン(42)》「毎日涙と鼻血が…」裸エプロンCDジャケットと陵辱される女子高生役を経て再ブレイクを果たした“並々ならぬプロ意識”と“ハチキン根性”
NEWSポストセブン
4月14日夜、さいたま市桜区のマンションで女子高校生の手柄玲奈さん(15)が刺殺された
「血だらけで逃げようとしたのか…」手柄玲奈さん(15)刺殺現場に残っていた“1キロ以上続く血痕”と住民が聞いた「この辺りで聞いたことのない声」【さいたま市・女子高生刺殺】
NEWSポストセブン
山口組も大谷のプレーに関心を寄せているようだ(司組長の写真は時事通信)
〈山口組が大谷翔平を「日本人の誇り」と称賛〉機関紙で見せた司忍組長の「銀色着物姿」 83歳のお祝いに届いた大量の胡蝶蘭
NEWSポストセブン
20年ぶりの万博で”桜”のリンクコーデを披露された天皇皇后両陛下(2025年4月、大阪府・大阪市。撮影/JMPA) 
皇后雅子さまが大阪・関西万博の開幕日にご登場 20年ぶりの万博で見せられた晴れやかな笑顔と”桜”のリンクコーデ
NEWSポストセブン
朝ドラ『あんぱん』に出演中の竹野内豊
【朝ドラ『あんぱん』でも好演】時代に合わせてアップデートする竹野内豊、癒しと信頼を感じさせ、好感度も信頼度もバツグン
女性セブン
中居正広氏の兄が複雑な胸の内を明かした
《実兄が夜空の下で独白》騒動後に中居正広氏が送った“2言だけのメール文面”と、性暴力が認定された弟への“揺るぎない信頼”「趣味が合うんだよね、ヤンキーに憧れた世代だから」
NEWSポストセブン
高校時代の広末涼子。歌手デビューした年に紅白出場(1997年撮影)
《事故直前にヒロスエでーす》広末涼子さんに見られた“奇行”にフィフィが感じる「当時の“芸能界”という異常な環境」「世間から要請されたプレッシャー」
NEWSポストセブン
天皇皇后両陛下は秋篠宮ご夫妻とともに会場内を視察された(2025年4月、大阪府・大阪市。撮影/JMPA) 
《藤原紀香が出迎え》皇后雅子さま、大阪・関西万博をご視察 “アクティブ”イメージのブルーグレーのパンツススーツ姿 
NEWSポストセブン
2024年末に第一子妊娠を発表した真美子さんと大谷
《大谷翔平の遠征中に…》目撃された真美子さん「ゆったり服」「愛犬とポルシェでお出かけ」近況 有力視される産院の「超豪華サービス」
NEWSポストセブン