2人は日本ハムで出会った(時事通信)
ドジャース・大谷翔平(30)の口座からの不正送金の罪に問われ、禁錮4年9か月、賠償金約1700万ドル(約26億円)の支払いを言い渡された元専属通訳・水原一平被告(40)。
裁判を終えた今も残る「最大の謎」は、大谷がなぜ水原を“相棒”に選んだのか、という疑問だ。古巣・日本ハム時代のチームメートから、重要な新証言が飛び出した。ノンフィクションライターの水谷竹秀氏がレポートする。(文中敬称略)【前後編の後編。前編から読む】
仕事仲間というより友人
水原が日ハムの通訳として働き始めたのは2013年1月だ。チーム統括副本部長の岩本賢一は米連邦地裁に提出した書簡で、「(水原は)通訳志願者約20人の中で、プレゼン力が突出していた」と採用理由を説明し、働きぶりをこう評した。
〈水原は常に誰よりも早くロッカールームに来て、選手やコーチの要求に文句ひとつ言わずに仕事をこなし、スタジアムを去るのも最後だった。球場の中だけでなく外でも、家族を含め外国人選手に時間を捧げ、面倒を見ていた。外国人選手には最も人気の通訳だった〉
岩本の書簡は水原の情状酌量を求めてのものだが、私が昨年秋に取材した日ハムの同僚選手たちもまた、水原の熱意を口々に語っていた。
2014〜2015年、クローザーとして活躍したマイケル・クロッタ(40)は、当時の水原をこう語る。
「彼は通訳としてだけでなく、日本での生活の面倒も見てくれた。球場へ行くまでの地下鉄の乗り方から、料理をする私のために食材店でどっちが塩でどっちが砂糖かまで丁寧に教えてくれた」
クロッタの妻は長男と生まれたばかりの次男を連れて来日したが、その時も水原が成田空港まで迎えに行ったという。
「息子が風邪をひいた時も病院に連れて行ってくれて、医師の説明を通訳してくれたんだ。一平は息子を可愛がってくれて、動物園にも一緒に行った。仕事仲間というより、もはや友人でした」(同前)
2015年に半年間、投手として在籍したミッチ・ライブリー(39)は水原の印象をこう語る。
「一平はアメリカの文化をよく理解していて、コミュニケーションにはまったく問題がなかった。よく札幌にある私の家に来て、プレステでサッカーのゲームをやったよ」
のちに妻となる水原の彼女も一緒に、ライブリー夫妻と焼肉を食べに行くなど親交を深めた。
渡米後も、通訳という仕事の枠を越えて大谷の身の回りのサポートをこなした水原。結果的にはそれが理由で大谷の口座にアクセスできてしまったのだが、そのスタイルは彼のキャリアを通じて培われていたのだ。