騒動が深刻化する中でフジテレビは『R-1グランプリ2025』の生放送を行う(番組公式HPより)
中居正広氏の女性問題に端を発したフジテレビ問題。CMスポンサーが一斉に撤退、その状況はいまだ変わっていない。そんな中、フジテレビが生放送するお笑い特番に注目が集まっている。苦境の中、批判されるリスクも抱えている。今、何が求められているのか。コラムニストでテレビ解説者の木村隆志さんが解説する。
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まさに勝負の生放送特番と言っていいでしょう。
8日、フジテレビが18時30分から『R-1グランプリ2025』、21時から『ENGEIグランドスラム』を連続放送します。注目すべきはどちらの特番も生放送であること。年に一度の「ピン芸No.1決定戦」であるお笑い賞レースの前者は当然である一方、収録が多いネタ番組の後者もあえて生放送を選択し、約4時間40分にわたるお笑いフェスのようなムードを感じさせられます。
そのフジテレビは騒動が深刻化する中、現在は「第三者委員会の調査結果を待つ」という苦しい状況が継続中。昨年11月に大会がはじまっていた『R-1グランプリ』はさておき、『ENGEIグランドスラム』は「今年の放送はないかも」などと不安視されていました。
『FNS27時間テレビ』などの中止が発表され、看板特番枠の『土曜プレミアム』もお笑いをフィーチャーした企画が減少。スポンサーのCM見送りによる制作費の問題などもあって、「しばらくお笑い特番は厳しいだろう」という声もあがっていました。
それだけに約4時間40分にわたるお笑い特番の生放送には決意のほどがうかがえますが、今のフジテレビには、どんな内容で、どんな姿勢が求められるのでしょうか。
『R-1』『ENGEI』ともに新たな試み
まず各番組の内容からあげていくと、『R-1グランプリ』は、昨年大会から芸歴による出場制限が撤廃されて実力者の再登場が可能になり、本当の意味で「ピン芸No.1決定戦」になりました。
今大会も決勝常連のルシファー吉岡さん、吉住さん、マツモトクラブさん、2度目の王座を目指す田津原理音さん、『ザ・細かすぎて伝わらないモノマネ』の王者・ハギノリザードマンさん、『M-1グランプリ』ファイナル常連のさや香・新山さん、ピンとコンビの二刀流芸人であるヒロ・オクムラさんと実力派が集結。さらに最年長50歳のチャンス大城さん、最年少23歳で芸歴3年の友田オレさんを含む9人が決戦に挑みます。
ただここ数年、『R-1グランプリ』は「審査結果に納得できない」などの声があがり、「せっかくの優勝にもケチがついてしまう」ようなところが続いていました。もともと「『M-1グランプリ』『キングオブコント』に視聴率や反響で大きく劣るのはネタの面白さだけでなく審査員の差もある」などの批判もあった中、今年はおなじみの5人に加えて新審査員2人を追加。しかも当日に発表するという仕掛けも用意されるなど、臨場感を上げる工夫が見られます。
フジテレビ系にしてみれば『R-1グランプリ』は今年3回目が予定されている『THE SECOND~漫才トーナメント』とともに、テレビ朝日系の『M-1グランプリ』、TBS系の『キングオブコント』に対抗する上で重要なコンテンツ。「お笑い」「バラエティ」を中心に一時代を築いてきただけに、賞レースのブランドが低迷したままではいられないところでしょう。
次に『ENGEIグランドスラム』は「日本一豪華なネタ番組」がコンセプトだけに、フジテレビがどんな苦境でもキャスティングのレベルを落とすわけにはいきません。今回も『M-1グランプリ』『キングオブコント』の歴代王者や爆笑問題らに加えて、『R-1グランプリ2025』の新王者もさっそく登場。トップレベルの漫才やコントが見られるネタ番組はほとんどないだけに貴重であり、笑いに懸けるフジテレビの強い意志を感じさせられます。
さらに今回の放送で特筆すべきは、チョコンヌ(チョコレートプラネット×シソンヌ)、ジェネレーソンズ(ジェラードン×ネルソンズ)、メトロンズ(しずる×ライス×サルゴリラ×作家・演出家の中村元樹)という実力派コント師によるスペシャルユニット。コント巧者をかけ合わせた3組が生放送でどんなネタを披露するのか。
両番組とも新たな構成・演出を採り入れるようであり、生放送特番という強みを生かして、Xのトレンドランキングをにぎわせそうなムードが漂っています。