座席の座り方も議論を呼びやすい(イメージカット)
四半世紀前に行なわれた第1回(2000年)調査のトップ5は、こんな顔ぶれです。
1位「携帯電話の使用」(着信音がうるさい、大きな声で話しているのが耳障り)
2位「座席の座り方」(席を詰めない、足を大きく広げたり組んだりしている)
3位「荷物の持ち方・置き方」(背負ったリュックが邪魔、ドア付近や通路に大きな荷物を置く)
4位「たばこについて」(決められた場所以外で喫煙している人がいる)
5位「環境美化に務めない人が多い」(タンやツバ、ガムを吐き散らす人がいる)
このとき1位に輝いた「携帯電話」は、しばらくランキング上位の座を守り続けましたが、2010年代に入ると順位を下げていきます。2018年からは「スマートフォン等の使い方」という項目になりました。これも一種の栄枯盛衰でしょうか。
4位の「たばこ」は、2021年に項目が除外されました。5位の「環境美化」は2007年以降は姿を消しています。今では「駅のホームでタバコを吸う人」や「吸殻を線路に捨てる人」はいないし、「タンやツバやガムを吐く人」も絶滅しました。ただ、21世紀に入ってからも意外にしぶとく棲息していたんですね。
「荷物の持ち方・置き方」がトップに輝いたのは、2018年のランキング。前年の2017年と翌年の2019年も、3位という堂々たる結果を残しています。今まで出た項目以外で、長年にわたって手堅い支持を得ているのは「ヘッドホン・イヤホンからの音もれ」「優先席のマナー」「車内での化粧」「酔っぱらった状態での乗車」「電車の床に座る」など。
「マナー違反探し」に精を出してもストレスが増えるだけ
電車内は「ムカムカする要素」や「ムカムカさせてしまう要素」に満ちあふれています。混雑した電車内という一種の極限状態に置いて、周囲と自分がなるべくストレスなく過ごすにはどうすればいいのか。
昨今は「咳やクシャミ」や「座席の座り方」に厳しい目が向けられる傾向にあるようです。そのほかランキングに登場した項目の中で、「やっちゃってるかも」と思い当たる節があったら、全力で改めましょう。話題になっている「荷物の持ち方」も、前抱えにして安心するのではなく、周囲への気配りを忘れないようにしたいものです。
そして、自分自身が無駄にストレスを感じないためには、殺伐としがちな環境に流されて「マナー違反探し」に精を出さないことが大切。狭い空間に詰め込まれているんだから、多少の迷惑はお互い様です。たくさんの乗客がいれば、電車に慣れていなかったり、暗黙のお作法を知らなかったり、無神経だったりする人がいるのは仕方ありません。
いちいち落ち度を見つけて「許せない!」と腹を立てるのは、不毛どころか損な行為です。「きっとあの人にも、やむにやまれぬ事情があるに違いない」と勝手に想像をふくらませて心の中で擁護してあげると、親近感すら湧いてくるかも。だからといって、うっかり微笑みかけると気持ち悪い人になってしまいます。そこは気を付けましょう。