手荷物検査も厳しくなっているという(イメージマート)
入国時、全ての荷物を開けられた
出稼ぎをし始めて4年が経つ。コロナ禍で渡航が不自由な時期もあったが、「コロナが明けてから、“遊びたい欲”が高まっているのか、以前よりもっと客が増えています」。先のことはわからないが、当面は今の働き方を続けるつもりだ。
「今の仕事は、続けられて40歳がギリギリのラインかな。それまでに良い相手が見つかって、アメリカで結婚とかできたら一番いいんですが。40代になってどうするかは、ここ数年で真剣に考えないとですね」
目下の懸念は、これまでのように渡航先に無事に入国できるかどうか。特にアメリカへの入国時、ここ数年で疑いの目を向けられることが増えてきたと感じている。日本人女性の一人旅と言うと、以前より明らかに、違法なことをするのではないかという視点でいろんなことを質問されるようになった。下着を入れたポーチに至るまで、全ての荷物を開けて細かく調べられ、別室で入国の理由を厳しく詰問されたこともあった。
「なぜ一人なのか、どこで何をする予定なのか、滞在先はどこか、今すぐに知り合いと連絡が取れるかなど、事細かに聞かれたこともありました。現地に住む友人宅を訪ねる予定だと説明しても、嘘をついているのではないかという視線を向けられる。もちろん、それなりに対策はしていますが、運が悪いと捕まっちゃうかも。それが一番怖いですね」
「『私は他の子と違う』と、自分に言い聞かせてきた」──。取材中に何度もミドリさんの口から出た言葉だ。
実際に苦しくてしんどい時、誰かに助けてほしい時、幾度となく自分自身に言い聞かせ、自身を鼓舞してきた言葉なのだろう。海外出稼ぎが、まだ“他の子”に浸透している働き方ではない、一部での動きということも、「他の子と違う」と言い聞かせてきたミドリさんには、ことのほか響いた手段だったのかもしれない。
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高い収入と自由を求めて、違法な“海外出稼ぎ風俗”に手を染める女性たち。第2回に登場したマリエさんも、第3回のミドリさんもリスクを感じつつ、収入や働き方には満足しているようだ。
しかしながら今、海外における“日本人風俗嬢市場”に大きな変化が起きつつあるという。
松岡かすみ・著『ルポ 出稼ぎ日本人風俗嬢』(朝日新聞出版)