おむつや下着が詰まっていることも
汚物の抜き取り作業をしている様子を見ていると、作業員が片手を汚物排出のホースにあてがっていた。汚物が流れているホースを安定させるためか、それとも作業員の単なるクセか。そう思って尋ねてみると、ちゃんと理由があるという。
「タンクが詰まっていて汚物が出てこないことがあるんです。だから、こうして片手をあてて、汚物がちゃんと流れてきているかを確認しています」(TESSEI担当者)
汚物タンクには内部の様子を確認できる小窓も設えられてはいるものの、それだけですべてが確認できるわけではないようだ。そして、実際にタンク内におむつや下着などが詰まっていることもあるのだとか。
JR東日本が新幹線のトイレで採用している清水空圧式という方式は、便器の穴が比較的大きいのが特徴だ(ちなみに東海道新幹線は穴が小さい真空式)。なので、多少のものならタンクまで流すことができてしまう。
通常時はタンクから臭気があがってこないように便器の穴にはフタが設けられている。ただしこのフタ、非常時などに停電して水が流せなくなったときでもトイレが使用できるように、上から押されると(つまり何かが落ちると)フラップが落ちてフタが開く仕組みだ。
そのため、おむつや汚れた下着などを便器に放り込んでも、そのまま汚物タンクまで流れてしまう。ときにはそれがタンクから汚物を抜き取る際にひっかかってしまうことがある、というわけだ。
異物が詰まっていて汚物がタンクから出てこずに現場でも対処できないと、JR東日本に連絡、詰まりを除去する作業が加わることになる。もちろんその場合でも、車庫を出て行く時間を遅らせてもいいということにはならない。だからこそ、ひとつひとつの作業を効率的に進めていくことが肝要なのだ。
(第3回に続く)
『トイレと鉄道』書影