ライフ

荻原浩氏、植物×パニックサスペンス『我らが緑の大地』インタビュー「同じ地球に生きる者同士、単純で恐ろしい構造にもう少し想像力を働かせてもいい」

荻原浩氏が新作について語る(撮影/国府田利光)

荻原浩氏が新作について語る(撮影/国府田利光)

〈森から有害な生物を駆除する。害虫、病原菌、草食動物……そして人間〉!?

 荻原浩著『我らが緑の大地』は、この地球の未来を果たして誰の目線で考えるべきなのか、改めて主語の在り処を問われる、「植物×パニックサスペンス」だ。

 主人公は大学発の農業系ベンチャーで助手を務める〈村岡野乃〉30歳。1歳半の息子〈一樹〉の母親でもある彼女は、大学院修了後、人気教授の〈真室〉が率いるここグリーンプラネット社に入社し、先輩の〈三井〉や〈石嶺〉らと実験三昧の毎日を送っていた。

 職場である〈夜黒森研究センター〉は東西9キロにも及ぶ広大な原生林に隣接し、研究趣旨に賛同した地主の〈由井さん〉がほぼ無償で敷地を提供。中でも由井は石嶺が研究中の〈植物語翻訳プロジェクト〉に興味があるらしく、〈私もそう長くないから〉と、野乃達にも事ある毎に発破をかけた。

 そんな中、視察に訪れた化学会社の社員が、開発中の大豆が元で中毒を起こし、救急搬送される事態が発生。幸い大事には至らなかったものの、実験農場付近には夜盗虫の幼虫やカメムシの大量の死骸が転がっており、〈なぜ?〉〈何が起きたんだ?〉と、野乃は想像もしなかった植物の叛乱劇に巻き込まれていくのである。

「植物に関してはそれこそ『千年樹』(2007年)という、楠の老木の小説を書いているんですが、以前から、あいつら一体何を考えてるんだろうっていう親近感と不信感の両方があったんです。実は我々に隠れて裏で何かやってるんじゃないかって。

 作中にも書きましたけど、埼玉大学の豊田正嗣教授が食害を受けた植物が全身に危険を伝える様子の可視化に成功していて、その画像を見ると凄いんです。脳を持たないはずの植物が、来たぞ、来たぞって、隣の株にまで信号を送っている。それくらい植物は生き残るための戦略や知性を持った〈知的生命体〉であると、これを機会に植物の陰謀について読者の皆様にも考えて頂ければ光栄です」(荻原浩氏、以下「」内同)

 例えば件の大豆中毒も、虫が来ても動けない植物が全身に毒性物質を行き渡らせたり、虫の天敵を匂いで呼び寄せたりする防衛策の一環だと考えられ、〈植物は、考えているのです〉〈体の構造も生命を維持するシステムもあまりに違うために、我々がそれに気づけないだけなのです〉と真室は言う。

 そもそも植物最大の特徴の1つが〈簡単に突然変異できること〉で、その自ら生き延びるために体質すら変え得る精鋭中の精鋭が、来客が枝豆として試食した〈スーパーダイズ〉だった。

関連記事

トピックス

自宅で亡くなっているのが見つかった中山美穂さん
《中山美穂さん死後4カ月》辻仁成が元妻の誕生日に投稿していた「38文字」の想い…最後の“ワイルド恋人”が今も背負う「彼女の名前」
NEWSポストセブン
工藤遥加(左)の初優勝を支えた父・公康氏(時事通信フォト)
女子ゴルフ・工藤遥加、15年目の初優勝を支えた父子鷹 「勝ち方を教えてほしい」と父・工藤公康に頭を下げて、指導を受けたことも
週刊ポスト
山口組分裂抗争が終結に向けて大きく動いた。写真は「山口組新報」最新号に掲載された司忍組長
「うっすら笑みを浮かべる司忍組長」山口組分裂抗争“終結宣言”の前に…六代目山口組が機関紙「創立110周年」をお祝いで大幅リニューアル「歴代組長をカラー写真に」「金ピカ装丁」の“狙い”
NEWSポストセブン
「衆参W(ダブル)選挙」後の政局を予測(石破茂・首相/時事通信フォト)
【政界再編シミュレーション】今夏衆参ダブル選挙なら「自公参院過半数割れ、衆院は190~200議席」 石破首相は退陣で、自民は「連立相手を選ぶための総裁選」へ
週刊ポスト
中居正広氏と報告書に記載のあったホテルの「間取り」
中居正広氏と「タレントU」が女性アナらと4人で過ごした“38万円スイートルーム”は「男女2人きりになりやすいチョイス」
NEWSポストセブン
Tarou「中学校行かない宣言」に関する親の思いとは(本人Xより)
《小学生ゲーム実況YouTuberの「中学校通わない宣言」》両親が明かす“子育ての方針”「配信やゲームで得られる失敗経験が重要」稼いだお金は「個人会社で運営」
NEWSポストセブン
『月曜から夜ふかし』不適切編集の余波も(マツコ・デラックス/時事通信フォト)
『月曜から夜ふかし』不適切編集の余波、バカリズム脚本ドラマ『ホットスポット』配信&DVDへの影響はあるのか 日本テレビは「様々なご意見を頂戴しています」と回答
週刊ポスト
大谷翔平が新型バットを握る日はあるのか(Getty Images)
「MLBを破壊する」新型“魚雷バット”で最も恩恵を受けるのは中距離バッター 大谷翔平は“超長尺バット”で独自路線を貫くかどうかの分かれ道
週刊ポスト
約6年ぶりに開催された宮中晩餐会に参加された愛子さま(時事通信)
《ティアラ着用せず》愛子さま、初めての宮中晩餐会を海外一部メディアが「物足りない初舞台」と指摘した理由
NEWSポストセブン
「フォートナイト」世界大会出場を目指すYouTuber・Tarou(本人Xより)
小学生ゲーム実況YouTuberの「中学校通わない宣言」に批判の声も…筑駒→東大出身の父親が考える「息子の将来設計」
NEWSポストセブン
大谷翔平(時事通信)と妊娠中の真美子さん(大谷のInstagramより)
《妊娠中の真美子さんがスイートルーム室内で観戦》大谷翔平、特別な日に「奇跡のサヨナラHR」で感情爆発 妻のために用意していた「特別契約」の内容
NEWSポストセブン
沖縄・旭琉會の挨拶を受けた司忍組長
《雨に濡れた司忍組長》極秘外交に臨む六代目山口組 沖縄・旭琉會との会談で見せていた笑顔 分裂抗争は“風雲急を告げる”事態に
NEWSポストセブン