旭琉會二代目会長の襲名盃に独占潜入した。参加者はすべて総長クラス以上の幹部たちだ(撮影/鈴木智彦。以下同)
暴排条例による規制強化が進んだ今、暴力団の大がかりな行事そのものが珍しくなったという。そんななか、沖縄で暴力団にとって最大の儀式である「組長の襲名式」が大々的に行なわれた。暴力団の置かれた現状や警察との関係性を知る上で重要な場面に、ヤクザ取材の第一人者である鈴木智彦氏が潜入した。
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2月8日朝、那覇市内から幹部の車に同乗し、二代目旭琉會・糸数真会長の二代目継承盃が執り行なわれる本部(北中城村)に向かった。門扉に続く脇道付近には、警察車両が7~8台停まっており、カメラを抱えたマスコミの姿もあった。
〈県警は捜査員ら数十人態勢で付近一帯の警戒にあたり、解散までの数時間、周囲は緊張が走った〉(2月9日付、琉球新報)
地元紙はそう強調するが、800坪を誇る敷地には高級車が押しよせ祝賀ムード一色だ。
14年前……2011年11月の初代富永清会長就任及び親子盃は、新生旭琉會の発足式でもあった。骨肉の抗争を繰り広げてきた四代目旭琉会と沖縄旭琉会が一本化するため厳重な警戒で150人の機動隊員が動員された。加えて暴排条例で会場が借りられなくなり、急遽幹部の自宅でゲリラ的かつ深夜に開催されため物々しい空気だった。警察は煌々とサーチライトを焚き、幹部や組員に入念なボディチェックを行なった。
今回の二代目体制発足に特別な事情はないが、跡目継承は組織最大の懸案事項である。代紋頭と呼ばれるトップは絶対権力者で、「親分がいえば黒いカラスが白くなる」世界なので権力闘争が起きやすい。
「だから旭琉會は初代の富永会長が逝去してから代表職を新設し、5年間跡目を決めなかったのだろう。その間入念に根回しし、徹底的に調整したに違いない」
友好団体幹部はそう解説する。旭琉會幹部に訊くとこう返答があった。
「ヤクザにとっていっそう厳しい時代が来る。トップになって私腹を肥やそうとする人間ではなく、なにかあれば手弁当で組織に貢献する人間でなければならない。それに力を持った一派の意向が筋になるなら、親分連中は『殺せ』しか言わなくなる。果たしてそれでいいのかとゆっくり話し合った」