自殺教唆の疑いで逮捕された濱田淑恵容疑者(62)
和歌山県の海岸で男性2人に自殺をそそのかしたとして逮捕された自称占い師、濱田淑恵容疑者(62)。自らを「創造主」と信じ込ませ、時に脅しを交えて金品を吸い上げていた疑惑が浮上している。謎めいているのは、濱田容疑者がいかにして“信者”を集め、どのように関係性を構築していったのかという点だ。
濱田容疑者が形作っていたのは大きな教団のような組織ではなく、少人数の信者たちがいただけだったとみられている。今回、本誌・週刊ポストは、亡くなった2人の男性とは別の元信者とみられる男性の関係者の証言を得た。
「また(大阪に)戻って働いてくれればいい。あの(自殺教唆)事件が知らされるまで、そう思っていました」
そう話すのは、濱田容疑者の元で10年超にわたって共同で生活していたという30代男性の母親だ。今から15年以上前、当時高校生だった息子が北関東の実家を出て行った。理由は、ある会社で働くためだった。
「ある日、息子が『オーディオ会社の説明会があるから行かせてほしい』と言ってきました。昔からオーディオ機器に興味がある子でした。その説明会の参加者には大学生もたくさんいたようですが、なぜか息子が選ばれました。新しく会社を立ち上げるから、ぜひ来てほしいと誘われていたことを覚えています」
盆も正月も帰ってこない
会社側からは「私たちは歳で耳がダメになってきちゃってるけど、息子さんは耳がいい」と繰り返し褒められた。「体一つで来ていいから」と言われ、縁のない大阪府河内長野市まで息子と一緒に行き、会社側に引き渡した。その場でひときわ存在感を放っていたのは、会社の立ち上げを資金面でサポートしているという中年女性。今振り返っても思い出すその女性が濱田容疑者だった。
場は終始和やかな雰囲気だったが、母親は突然社会に出ることになった息子を案じ、待遇について問うたという。
「すると、『社員が共同生活をしている。その建物自体が会社になっていて通勤の必要もない。衣食住が整っていて、給料も10万~20万円もらえる』といった説明を受けました。ただ、どんな仕事をするのか、内容はわかりませんでした」
実際に離れて暮らしてみると、息子の様子に不安をいだくようになった。お盆も正月も実家には帰らず、尋ねても「仕事が忙しい」と告げられるのみ。
「(息子と)約束をして大阪に行った時も、『急に仕事が入ったから会えない』と言われ、会えませんでした」
ただ、たまにする連絡には返事が来たし、母の日にはプレゼントも贈ってくれた。心配しながらも忙しく働く息子を応援していた。しかし、約5年前、突如息子が実家に帰ってきた。