ネプリーグに出演する各局出身の女性アナたち( インスタグラムより)
「華やかな会社員」という特殊性
このように賛否の声が分かれる元になっているのが、「人気タレントと同等レベルの知名度とルックスを持ちながら、会社員でもある」というアナウンサーの特殊な立ち位置。「前に出てテレビに映ってナンボ」のタレントに対してアナウンサーは「一歩引いて周囲を立てる」という謙虚な姿勢が求められ、それがむしろ差別化や好印象につながっていました。
さらに、喜怒哀楽をはっきり見せてキャラクターを浸透させるタレントに対して、アナウンサーは基本的に笑顔で穏やか。特に報道・情報番組に出演するアナウンサーは定期的にその好印象を積み重ねられるため、タレント以上の支持を得やすいところがあります。
ただ、「会社員であること」を視聴者も知っているため、タレントのような起用や振る舞いを見ると批判を受けやすいのが難しいところ。アナウンサー本人たちは制作サイドや視聴者の期待に応えようとしているだけでも「調子に乗るな」などのバッシングを受けやすく、悩みの元になりがちです。
また、番組出演時以外では、「会社員なのに、打ち合わせ、食事、通勤、プライベートなど、局内外のどこに行っても注目を集めてしまう」「でも華やかなのはテレビに出ているときだけで、それ以外は一般の会社員以上に地味な日々を送っている」。加えて今回の騒動で注目されているように、「会社員だから“影響力のある接待要員”として声をかけられやすい」などの難しさもあります。
とはいえ、アナウンサー本人たちもこれらの難しさを冷静に受け止めていて、このところ自分なりのキャリアを考えて行動を起こす人が増えていました。かつては「少なくとも結婚・出産まで局アナとして勤務したい」という人が多かったものの、近年では「在京キー局は数千倍」とも言われる採用試験を突破しながら20代のうちに辞めてしまう人も珍しくありません。
改善されるアナウンサーの勤務状況
退職後の道はフリーアナウンサーだけでなく、タレントや俳優、インフルエンサー、一般企業への就職や起業、就学や留学など多岐にわたります。在局中から積極的に番組のYouTubeチャンネルに出演したり、個人名のSNSアカウントで発信したりという人も増え、以前よりも自由なキャリアを描きやすくなっているのでしょう。
キャリアだけでなくワークライフバランス(仕事と生活の調和)という点で、「近年フジテレビのアナウンサーに関する対応は民放の中でも上位」という声がありました。事実、勤務形態、産休・育休、キャリア支援、異動のケアなどのさまざまな要素で「コロナ禍を経たここ数年間のうちに働きやすくなった」という声を現職のアナウンサーたちから聞いています。
生放送の情報番組で「○○アナは体調不良のためお休みします」というケースがしばしばあり、それが報じられると必ずと言っていいほど局に批判の声があがりますが、これは主に「休みやすくなった」ことの裏返し。局アナ時代のハードな仕事ぶりを赤裸々に話すフリーアナウンサーなどもいますが、「変わる前の話」というケースが多いようです。
今後もアナウンサーたちが会社員である限り、番組出演するたびに一定数の批判があがるでしょう。しかし、よほど第三者委員会の調査結果に問題がなければ、今回と同等程度の企画は続けられていくのではないでしょうか。
【木村隆志】
コラムニスト、芸能・テレビ・ドラマ解説者。雑誌やウェブに月30本前後のコラムを提供するほか、『週刊フジテレビ批評』『どーも、NHK』などの批評番組に出演し、番組への情報提供も行っている。タレント専門インタビュアーや人間関係コンサルタントとしても活動。著書に『トップ・インタビュアーの「聴き技」84』『話しかけなくていい!会話術』など。