自殺教唆の疑いで逮捕された濱田淑恵容疑者(62)
自称占い師の女に自殺するようそそのかされて命を落としたとされるオーディオ会社元社長の寺本浩平さん(事件当時66歳)。その寺本さんの長男が、手記を寄せた。当初、父の最期は「事件性のない自殺」と聞かされていたが、今になって事件だったことがわかり、長男は「気持ちが混乱した」と明かす。
大阪府河内長野市の自称占い師、濱田淑恵容疑者(62)ら2人が自殺教唆の疑いで3月11日、大阪府警に逮捕された。濱田容疑者は2020年、和歌山県広川町の海岸で寺本さんと、アルバイトの米田一郎さん(当時51歳)に対し、「命を捨てて(濱田容疑者の交際相手から)悪いものを取り除く」「気が変わったら沈め合うこと」などと伝えて自殺を決意させ、入水自殺させた疑いがある。
しかし、当時捜査した和歌山県警は「事件性のない自殺」と判断し、遺族らに伝えた。寺本さんの長男は〈2020年8月に亡くなったと聞いた時は、突然のことでびっくりしましたが、悲しいという気持ちにはなれませんでした。父親を忘れようとしていましたから〉と綴っている。
手元にある遺品はハンカチ1枚のみ
長男が「父親を忘れようとしていた」するのは、20年ほど前から募る不信感があったからだという。
〈これまで父親に対して抱いていたのは、『自分を見捨てた最低の父親』というものでした。高校生の時には、亡き祖母が僕に残してくれた唯一の形見である200万円の預金通帳をだますようにしてとり上げられました。20歳の時には、突然、学費と生活費をストップされて親子の縁を切るといわれ、びっくりしました。理由を聞こうと、夜行バスに乗って大阪の河内長野の父の家まで行ったのですが、家にあげてもらえず、その場で追い返されました。その後、何の音沙汰もなかったのですが、(父が)会社を退職する2014年に健康保険の扶養家族から外すので書類を送れという連絡があり、今後は家族や親戚との縁を切ると一方的に言ってきました。以後、何の連絡もありませんでした〉
だが、大阪府警の再捜査により、寺本さんが亡くなるまでの十数年間、占い師を名乗る濱田容疑者に“入信”していたことが明らかになった。自殺をそそのかされて命を落とした疑いがあることを、最近になって知ったのだ。
〈単なる自殺ではなく自殺するよう仕向けられていた。僕に対して行ってきたひどい仕打ちも、容疑者である濱田淑恵によって命令されていたことだと知って、父が哀れでなりません。(父は)給料だけでなく、退職金や祖母から相続した実家の土地、以前住んでいた京都のマンションを上納していたようです。京都のマンションには、中学生のころ何回も行ったことがあり、当時ユニバーサル・スタジオ・ジャパンに連れて行ってもらったことを思い出します。退職後の顧問料もすべて上納し、自分はわずかなお金を与えられて米田さんと会社に寝泊まりしていたそうです〉
事件の全容解明はこれからだが、寺本さんが所有した不動産が濱田容疑者側へと渡っていることなどが確認されており、寺本さんの遺書が濱田容疑者らによって偽造されていた疑いについても捜査が進められている。
〈そんな父のことを思うと、本当にかわいそうになりました。僕のところには死んだときに身に着けていたハンカチと遺骨があります。これまで見るのが嫌で引き出しの奥にしまってありましたが、ようやく見ることができます〉