米大リーグ、ドジャースの大谷翔平(Sipa USA/時事通信フォト)
誰もが認めるスーパースター、ドジャース・大谷翔平選手(30)。昨季は54本塁打・130打点を記録し、ナショナルリーグ2年連続の本塁打王、そして日本人選手初の打点王の2冠を獲得。ワールドシリーズ制覇にも貢献し、DH史上初のMVPに輝いた。今年3月、2年ぶりの投打の「二刀流」の復活、さらにワールドシリーズ連覇を目指すシーズンが始動したばかりだ。
大谷選手のように前人未踏の領域を突き進む“天才”に共通する特性は何かあるのか──。実は、最新の研究では徐々にその全容が明らかになってきている。
臨床スポーツ心理学者の児玉光雄氏が、「パフォーマンス心理学」の観点から、大谷選手の思考・行動パターンを分析し、仕事への生かし方を綴った『大谷翔平に学ぶポジティブ思考で運命を拓く力』(双葉社)より、天才に共通する性格をお届けする。(同書より一部抜粋して再構成)【全3回の第3回。第1回を読む】
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「天才」。とても魅力的で、神秘的な言葉です。
2021年にアメリカのウィスコンシン大学などが、「天才に共通する性格(パーソナリティ)」を調べるために、8000人の被験者を対象にメタ分析を行いました。その結果、天才の性格特性として「開放性の高さ」が明らかになったのです。
「開放性」とはある特定のパーソナリティを表現する専門用語で、「ポジティブな興味をもって、そのモチベーションを維持しながら行動に移すことができる」という性格を意味します。
「開放性の高さ」は、「好奇心の旺盛さ」を意味します。
旺盛な好奇心が行動力と集中力を極限まで高め、取り組んでいるテーマを深掘りする「ディープ・ワーク」を可能にします。結果、レベルの違う抜きん出た能力や技術を備えた天才が誕生するというわけです。
大谷選手はこう語っています。
「その瞬間が、今日来るかもしれない。明日来るかもしれない。もしかしたら、ある日突然に何かを掴む瞬間が来るかもしれない。だから毎日練習したくなるんです。毎日バットを振るときもそう、投げるときもそうです。もしかして、その瞬間が来るかもしれないと思って、いつもワクワクするから練習に行くんです」(『道ひらく、海わたる 大谷翔平の素顔』佐々木亨〈扶桑社〉)
実は、「好奇心」と「ワクワク感」は同義語なのです。特定のテーマに対して異常なほど好奇心の強い人の心の中は、いつもワクワク感で満たされています。
サイエンスライターの鈴木祐さんは天才をこう定義しています。
「生まれつき知能が高かろうが、生まれつき強い精神力を持とうが、好奇心という土台がなければせっかくの能力も発揮できません。自らの得意分野を超えたジャンルに興味を抱き、損得の勘定を超えて幅広いチャレンジを重ねなければ、どんな才能も活かされずに終わりかねないでしょう。つまり、真の天才とは、死ぬまで人生を探索できる人間なのです」(『運の方程式』鈴木祐〈アスコム〉)
大谷選手の心のベースにも、野球への飽くなき好奇心という土台があります。好奇心をもつことの意義は、計り知れず大きいのです。
最後に一つだけ付け加えると、好奇心は、「運」も引き寄せます。いつも好奇心をもって、ワクワクと楽しいことだけに意識を置く人に運は寄ってくるのです。
どうせなら、楽しいことにもっと敏感になりましょう。そのためには、普段からポジティブな楽しい出来事だけを記録する習慣を身につけることです。幸せを集めることは、すなわち運を集めることでもあるのです。
(了。第1回を読む)