花見の季節にあわせて違法な「路上営業」に踏み出してしまう店舗が出現するか?(イメージ)
「コロナ禍でも、屋外なら安心して飲めるという雰囲気があったでしょう? それで屋外で飲めるような店がガーっと増えた。そのとき出来た店は、どこも狭くて内装も簡素、路上営業を前提にしたような作りの店までありましたよ。何もかもずさんで、夜逃げしちゃった店もありました。中にはうまくいくところもあったんだけど、違法営業もドンと来い、って感じで法律も、地元のルールも守らない」(X店近くのスナック経営者)
筆者が以前、飲食店の路上営業問題を取材したときは、当局の見回りがあればその都度、客も協力のもとに机と椅子を移動させていた。そして、見回りの姿が見えなくなれば、わいわいと元の位置で宴会を再開する、といった有様だった。
この女性が言うとおり、新型コロナウイルス感染症対策として、いわゆる”密にならずに安心”といった考え方から野外で営業する店舗が人気を博した。店を改築したり、元々の敷地を改装して「野外」を客に提供した店舗もあったが、店に隣接する路地や歩道などの「公道」を違法に占拠し、机や椅子を勝手に並べて営業する店も現れた。そして、後者のやり方が普通のことになったのかと錯覚するほど、勝手に路上営業を常とする出店が相次いだ時期もあった。
そうした店は、あくまで期間限定のはずだった。ところが、新型コロナウイルス感染症が5類へ移行し、日常を取り戻したあとも店内だけでなく外で飲食できる営業を続けた。店の敷地内で続けるならば何の問題もないが、道路を不法占拠しての営業も続いた。歓迎する客がいるからと、もはや経営者自身が路上営業をやめられなくなっていたのだろうか。
前出のスナック経営者は「とんでもない」と語気を強める。
「儲かるからって違法なことをやっているのは、ダメなのよ! 客が喜ぶから違法なことでも仕方ないという理屈で衛生上も問題があるモノ、たとえば加熱の足りない肉メニューを出したりしたらダメじゃない。客も”自己責任だ”とか強がるけど、それって薬物の売人みたいじゃない。誰が責任取るの? 安心の根拠は?って」(X店近くのスナック経営者)
X店とは競合関係にある近隣飲食店経営者の男性も顔をしかめ、次のように分析する。
「コロナ禍を超えて頑張ってきた店は確かにあって、Xも頑張っていたほうだと思う。ただ、資材費も人件費も上がって、従業員も外国人ばかりになって、いろいろ考えられなくなっていたのかもしれない。迷惑かけたんだから反省するべきだと思うし、かばうわけじゃないけどさ」(飲食店経営者の男性)
折しも世は「花見」の季節、新人歓迎会シーズンに突入するタイミングである。飲食店にとってはかき入れ時で、気温の上昇とともに「野外」に席を設けたくなるかもしれないが、今回の摘発が違法な路上営業の抑止力になるのだろうか。