ガラスの破片で埋め尽くされた三菱重工のビル爆破事件の現場(時事通信フォト)
出張先から羽田空港に帰り着くなり、東京地検で取り調べチームに合流した。緒方氏が担当したのは総括班長だ。捜査の全体像を俯瞰しながら被疑者の自白と物証との間に整合性があるか検証するよう求められた。取り調べにはグループのリーダー格の大道寺将司らがすんなりと応じていたが、被疑者らの供述と物証を突き合わせていくうちに、緒方氏は不自然なことに気づく。
「彼らの供述では、三菱重工業ビルの爆破で使用した爆弾は犯行の数日前に製造したというのです。しかし、大道寺の妻のあや子が暗号を使ってつけていた帳簿を解読すると、爆弾の材料となる薬品などは8月上旬には全て揃っていた。なぜ製造までこんなに時間が空いているのかと思ったのです」
警視庁に保管されていた押収品を確認しに行くと、真っ黒に塗った縄はしごや数百メートルはある長い電線などがあったことも気になった。
「いったい何に使うつもりだったのだろうか」
緒方氏が腑に落ちないものを感じていた最中のことだ。後輩検事が「本当の爆弾製造日は8月上旬です」とするあや子の供述調書を取ってきたのである。これでは他のメンバーの供述と辻褄が合わなくなる。
「なぜ調書にする前に総括班に連絡しないんだ!」
後輩検事に問い質すと、公安部の副部長の指示だと言うばかり。すぐさま副部長に説明を求めると、「いや、緒方、あれでいいんだ」と返してきた。
「その時に初めて『レインボー作戦』の存在を知らされました。彼らはビル爆破事件の前に昭和天皇の暗殺を図り、天皇のお召し列車を爆破する計画を立てていたのです」