トラブル発覚当初、中居は楽観視していた(2020年4月)
港氏は会見中、中居氏の番組を継続させたことについて「少人数で対応するのが女性の希望」「彼女のコンディションを常に意識して」と何度も口にしていたが、問題をセクハラではなく、プライベートなものと思い込みたかったことが伺える。「女性側がどういう気持ちになっていると思うか」という質問にはしどろもどろで答えに窮し、他の記者に「当該女性から会社側にどういう要求があったのか」と問われた時は、片手で口を覆っていたからだ。被害者の心情を慮り寄り添うという意識は弱かったのだろう。
中居氏の事案を“特殊な事例”といい、「加害者が中居という国民的スターだったから」と言われると小さく頷いた港社長。加害者が中居氏だったことで、影響の大きさを考えたのだ。「そっちを守ろうということが特殊だったのでは」と問われると、「そういう気持ちはありません」と視線を落として否定した。顔をあげて正面から否定できない何かが港氏の中にあったのだろう。
「守りたいとか隠したいとかいう気持ちはありませんでした」と眉間にシワを寄せて返答した港氏だが、コンプライアンス室長にも相談せずに対応。最優先に守りたかったものが女性社員ではなかったことは冒頭の謝罪姿勢に表れていた。その会見から約2か月後、3月31日に報告された第三者委員会の調査結果で、港氏の対応や編成幹部らの対応は二次加害行為と認定された。
会見で調査結果の報告を行った第三者委員会の竹内朗委員長は、終始、ゆっくりと言葉を区切りながら「重大な人権侵害」である性暴力被害があったと認定したこととその根拠について説明。言葉を区切り、時に飲み込むように間をあける竹内氏の話し方は、報告書の内容がいかに深刻なものであったかを印象づけた。
第三者委員会が実施した社員に向けて行われたアンケートは「アナウンサーが脆弱な立場にあったのではないかという観点で行われた」といい、「ハラスメントが蔓延していたという実態があった」と認定。「ハラスメントの通報窓口が機能していない」「年齢、性別、容姿などに着目して呼ばれる会合があった」「若い女性社員や若い女性アナウンサーが呼ばれていくという問題があった」と指摘、類似の事案も公表された。1月の会見で局の女性アナらの接待同席の常態化について問われ、「私はそういうことはなかったと信じたい」と答えていた港氏の力ない声が思い出される。
会見での謝罪姿勢の違いだけ見ても、事案に対応した社長や事実を知らされた経営陣の意識がわかるケースだったといえる。改善策が発表されたフジテレビだが、その改善策が根付くのはまだまだ先のことだろう。