子役時代からスターだった安達祐実
「子役の壁」を乗り越えた道のり
ただ、安達さんはもともと超万能タイプの女優だったわけではありません。『家なき子』で演じた相沢すずの印象があまりにも強烈であり、さらに『ガラスの仮面』(テレビ朝日)では主人公・北島マヤを演じるなど、「天才」というイメージが強い主演女優そのもの。そのため子役から20代あたりまでの安達さんは、どんな役を演じても相沢すずや北島マヤのイメージを重ねられて苦しんでいるところもありました。
しかし、2000年代に入ると、医療コメディの『ナースのお仕事』(フジテレビ系)で看護師、時代劇の『大奥』(フジテレビ系)で和宮を助演としてそつなくこなしたことで風向きが一変。それ以降はむしろ出演作が増え、経験値を積み重ねながら着実に芝居のスキルを上げ、人々の印象を「天才子役から演技のうまい大人の女優」に上書きしました。
また、その間プライベートではそれぞれ2度の結婚と離婚、出産と子育てを経験するなど、子役時代からの人生はまさに波乱万丈。そんな安達さんの人生を「ずっと見続けてきた」という日本人は多く、単に知名度だけでなく常に気になる存在であり続けていることもオファーが途切れない理由の1つでしょう。
しかもこれだけ波乱万丈な人生を歩んでいても、その見た目に苦労や疲労などは表れず、むしろ子役時代の面影をほのかに感じさせる若々しさも強みの1つ。40代に入った今なお、母親役だけでなく独身女性としてラブストーリーに出演しているところにその強みが表れています。
人気子役であるほど、成人後は「劣化した」か「子どものイメージが抜けない」と言われやすい難しさを抱えて徐々に出演作が減り、ひっそりと引退する人が少なくありません。しかし、安達さんは精力的に出演作を積み重ねることで「子役の壁」を力強く乗り越えました。
そしてもう1つ見逃せないのが、2021年12月に長年所属したサンミュージックを退所し、担当マネージャーと独立したこと。もしかしたらそれが転機となって現在の“第2次主演期”がはじまったのかもしれません。いずれにしても子役時代ではなく40代の現在が全盛期という感があり、主演・助演を問わず出演作を重ねながら世代を超えた国民的女優となっていくのではないでしょうか。
【木村隆志】
コラムニスト、芸能・テレビ・ドラマ解説者。雑誌やウェブに月30本前後のコラムを提供するほか、『週刊フジテレビ批評』『どーも、NHK』などの批評番組に出演し、番組への情報提供も行っている。タレント専門インタビュアーや人間関係コンサルタントとしても活動。著書に『トップ・インタビュアーの「聴き技」84』『話しかけなくていい!会話術』など。