ファッション関係者を中心とした社交場になっている
近年、ファッションブランドが飲食業界との関係を深めている。一流ブランドやセレクトショップがカフェやレストランを併設したり、ファンの多い有名飲食店のロゴのTシャツやグッズを販売するなど、そのかたちはさまざまだ。実は「食」と「ファッション」の親和性は非常に高い。どちらも流行の最先端と顧客ニーズを捉えなければならないし、SNS隆盛のこの時代、飲食店も「映える」ことや「お洒落さ」を意識する必要があるからだ。ファッション業界のインフルエンサーが「食」に傾倒していることが多いのも、この現象と無関係ではないだろう。
数々の異業種コラボレーションを手掛けたクリエイティブ・ディレクターで、ファッション業界きっての食通として知られる梶原由景氏が最先端の実例とともに解説する。
* * *
かつてファッションが独占していた熱量と高揚感。今は「食」の世界に多くを奪われてしまった気がする。あの日裏原宿に並んでゲットしたTシャツやスニーカーより予約困難店の一皿に興奮する。ファストファッション台頭によるコモディティ化で洋服が魅力を失い、その瞬間その場所でしか体験できない「食」の吸引力が「服」のそれに優ってしまったのかもしれない。しかし「服」も「食」もそれぞれ時代を彩る重要な要素だ。実は相互に影響しあう部分もある。
新丸子(神奈川県川崎市)といえばドラマ『孤独のグルメ』にも登場した「三ちゃん食堂」。中華、和食なんでもござれの老舗で、人生の先輩たちがハードリカーを酌み交わす。そんな下町の表情を見せるこの町に昨年3月、ファッション関係者やクリエーターが大挙する立ち飲み店が出現した。その名は「夢であえたら」、常連は「夢あ」と呼ぶ。